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「藤原叶多?」

俺がドアを開ける音で出てきたらしい。
室内を見回していた顔を前向きに固定すると、そこには爽やか系なこげ茶の髪の少年がいた。

「うん、そう。中田結城クン?」

「そ。てか結城でいいから。何て呼べばいい?」

そう言ってにっこりと笑う結城。裏があるとは思えない。
久しぶりに見たまっすぐな笑顔が少し眩しくて、目にちくりと痛みが刺す。

(これは、感情?それともただの反射的なもの?)


わからない。

…わかりたくも、多分ない。


浮かんだ思いに蓋をする。
いつもこうやって、逃げる。目をそらして…俺はまた。


「別になんでもー。あ、でも”カナ”は駄目。」

”カナ”は、未来が俺を呼ぶときに使ってた呼び名だ。
他の人が呼ぶなんて許せない。
何をしてしまうのか、想像することすら出来ないほど、俺の中の未来は大きい。

「未来」も、未来も、俺の手には入らない。


「ほいほい。じゃあ普通に叶多って呼ぶわ。一年間よろしく!」

差し出された右手。
どういう意味?これ。

見上げた目に疑問が映っていたのだろうか、少し驚いたような顔をされた。


「握手。」

「あくしゅ…て、何?」

「…はぁ!?」

そんなに驚かれても。知らないものは知らないのだからしょうがない。


「こうやって、ほら、手ぇ出して。」

体の脇に下りたままの手に突然触れられて、思わず弾き飛ばす。


あーあ、やっちゃった。
いきなり触られたら、対応できないじゃないか。




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あきゅろす。
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