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「待たせてごめんねー。」

「いえ、大丈夫です。パンフありがとうございました。」

そう言ってパンフレットを織戸さんに渡す。


『年上に対してはそこそこの敬意を持つこと!
じゃなきゃあたしが報われないわ!いいわね!?』

未来に散々言われたせいか、日常生活の一般常識とかはある程度身についていると思う。
仕事のときは、年齢も何もないから、そこは別として。


「ん、ありがと。施設とか覚えられそう?」

「はい。記憶力はいい方なので。ありがとうございます。」

「そっか、じゃあここからは、これに書いてないことの説明ね。」


書いてないこと?施設関係以外に、学校生活で必要な知識なんてあるのか?
疑問に思う。

とはいえ俺は今までに学校生活なんて送ったことはないからわからないのだけど。
研究所から逃げ出すまで、教育を受けてなかったわけじゃないけど、あくまでそれはマンツーマンでのもので。
集団生活、なんてものをするのも、実は初めてだったりする。

「あのさ、…同性愛、ってわかる?」

織戸さんが、少し躊躇するように発した言葉で、瞬間的に色んなことを悟る。
洞察力は、裏世界じゃものすごく大切だからね。さすがに読心術は使えないけど。

「まぁ…。」

「この学園、男子校でしかも全寮制で…エスカレーターでしょ?だからその…」

「あぁ、はい。わかりました、大体。」

適当に相槌を打っておく。
要するに、ホモだとかバイだとかがいるよーってことだろう。


同性愛に偏見はない。というか恋愛沙汰に興味がない。
自分がその対象に成り得ることはごく稀だし、たとえ向けられても相手にしないし、何よりどうでもいいし。

一番最後のが半分以上の理由であることは間違いないけど。

あと付け足しておくならば、『そういう経験』も今までにあるから、貞操観念が低い、ということもあるだろう。
気持ちよくなれて、後に引かない関係。相手は誰でもいい。

俺にはうってつけだね、そういうの。



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