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寮監室、と書かれたドアを叩く。小気味良い音の後、すぐに返事がかえってきた。

「今日入寮の藤原叶多です。今年から編入なんで、会長に案内されて来たんですけど。」

「はいはーい、入っていいよ。」

ドアを開けて中に入ると、予想外に広かった。
応接間兼仕事場所みたいな感じの部屋で、その先にドアがあるから、きっとこの人はここで生活しているに違いない。


「適当に座ってくれる?今お茶淹れるから。」

「あ、はい。」

部屋の中央あたりにある向かい合わせのソファの片割れに腰掛ける。
お茶まで出してくれるなんて、親切な人だなと純粋にそう感じた。

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます…って、あ、れ…?」

あれ、この人、どこかで。
妙な既視感。

「ん、どうしたの?」

どうやら相手はこっちのことを知らないようで。
俺も絶対に知っている、というわけではないのだけど、この雰囲気は、どこかで…
勘を大切にするのは俺のポリシー。勘って本能的なものだから。
てことで素直に聞いてみる。別に聞き返されても問題ないし。


「あの、俺、あなたにどこかでお会いしたことありますか?」

「ううん。君みたいな子、会ったら覚えてるはずだし。初対面だと思うけど…」

「そうですか。すいません、人違いだったみたいですね。」

嘘だ。人違い、なんて言ったのは。
この人は、本当に俺には会ったことがない。それはわかった。
でも俺は、この人の雰囲気を知っている。

ということは多分、この人の血縁者の誰かと、俺は関係を持ったことがある。

やっぱり、兄弟とか親とか、どんなに外見が似てなくてもわかる場合は多い。
とことん似てない場合もあるから、完璧にこの勘が信用できるわけじゃないけど。こんなに強い既視感。間違いない。



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あきゅろす。
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