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「はい?」

「はい?じゃねぇよ。返事もしないでぼーっとしやがって。」

そういえば、会長の質問に答えてなかったような気もしないでもない。
自分より10cmほど上にある形のいい眉が歪められるのを見て、思い出した。


「すいません。自前ですよ。目立ちます?」

「当たり前だろ。はじめて見た。」

そう言うと、会長の指が俺の髪に触れる。
見えないけれど、てっぺん付近にある髪を一房手にとられたらしい。微かに髪が引っ張られる感触。


「でも、綺麗だな。特に、目。」


ふっと笑った顔が、なぜだか未来とリンクして見えた。
純粋な笑みを向けてもらったのは、あの日以来初めてだった、から?


それから目が離せないまま、気づくと会長の顔がものすごく近くにあって、反射的に閉じた瞼に温かい何かが触れる。

後頭部に軽く添えられた手に少しだけ頭の重さを預けると、顔が自然に上を向いて。
左の瞼にあった温もりが、目じりを通って、左目の下の刺青付近に移った。


…暖かくて、心地いい。

性的な意味での快楽とはまた違った、気持ちよさ。
未来といるときにいつも感じていた気持ちを、なんとなく思い出せた気がした。


一歩の進歩?
そんなことないよ。

だって俺は『大切な人』なんて、『唯一』だなんて、未来が在るべきそこを誰かに譲るつもりはないからね。
その他大勢の中から、別にこいつが抜け出したわけじゃない。


「抵抗…しないのか?」

「してほしかった?」

「いや、そういう話じゃ。」

わざと話をはぐらかす。
こいつが言いたいのはそういうことじゃない。



そのまま沈黙が降りる。

会長さんは口を開きかけては閉じて、を繰り返してるみたいだけど、俺からは聞かない。
向こうから言わせたほうが、楽しくなるだろうから。




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あきゅろす。
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