在世界一號,
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音楽室にこもってしまえば、月日が経つのは早かった。
好きなことにだけ集中できる。
そこに余計なものの介入は、一切無い。
時折携帯電話を開いて、日付を確認するだけだったので、時間の感覚はなかった。
起きて、寝て、弾いての繰り返し。
たまっていたストレスは、いつの間にか無くなっていた。
いろんなことを、考えた。
これからのこと。
留学してからのこと。
生徒会のこと。
そしてもちろん、会長や、転入生のことも。
転入生は今でも好きになれないままだ。
まあ最後に会話したのはもう随分昔のことになるのだが。
理由はわからない。なんとなく、この子やだなって感じ。
会長のことはもっと、よくわからなかった。
俺は引き止めてほしいのだろうか。そうされたとしても何も変わらないのに。
そしてなにより、会長との関係を切ったのは俺のくせに。
…好きって、何なんだろう。
何もわからなかった。
俺は、何も知らない。知ろうとすらしてこなかった。
「だって、バイオリン以上に大切なものなんて無い…」
絶対的優先順位1位が決まってしまえば、他のことに興味なんて持てなかった。
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