在世界一號,
4
もういい。
仕事とか知らない。
一般生徒の転入生。
そこにいるなら仕事してみてよ。
あんたがこの場所にふさわしくないってこと、わかって。
俺は第三音楽室に逃げる。
しばらくコンサートも、コンクールもない。
ああでも確か、一本CMの仕事が入ってたかも。
…顔を出すのは嫌いだ。
俺の音じゃなくて、顔を好きになる奴がいるから。
自分の顔が世間にウケるっていうのは理解してる。
顔がいいほうがやっぱり舞台に立つ上ではいいこともわかってる。
でも、俺の音は素人にでもわかるほど美しい音ではないのかと思う。
俺の音は、俺の全てだ。
俺は――埋もれてしまうのか。その程度、なのか。
天才だとか言われてきたし、努力もしたし、バイオリンは、好きだ。
でも自分に絶対的な自信があるのかと言われたら、そんなことは全然無い。
本当はいつだって不安だ。
緊張だっていつもいつもして、泣きそうなほど、震えるほど怖い。怖くてたまらない。
それでもまだ俺が立っていられるのは、そうでなくちゃいけないからなのだ。
それが何よりも大事なものだからだ。
でも、今、
「いたい、よ…」
支えてくれる人は、いない。
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