在世界一號, 12 それから――― 確か、響に、弾けと言って。 黙って音楽室に二人で行って。 「疲れているから」と、一曲だけ弾いた後、これまた無言で響は音楽室を出て行った。 正直あまり覚えていない。 今は生徒会室に、一人。 さっきは夕暮れの赤に染まっていた空が、今は濃紺に鈍く光っている。 …すごかった。 今もまだ、あの世界に引き込まれたまま抜け出せない。 表面上は書類を見てるはずなのに。 内容が入ってこないどころか、ありもしない幻聴すら聞こえる。 あいつがまた一歩、遠ざかった。 それを、思い知らされた。 違う世界の人間、なんだと。 届くはずなど無いのだと。 転入生の目を向けさせないように、響の嫌がることは消し去るように。 動いて、守っていたつもりになっていたのは、 結局、 「俺だけだったって…ことか…」 [*前へ] [戻る] |