在世界一號, 4 「理事長の甥なんだとよ。」 よっぽど不思議そうな顔をしていたらしい。 というか裏口ですか。 「どっから聞いたの、そんなことー」 「あいつ。」 「ん?」 「だから、編入生から直接。あいつ俺に惚れてんだよ。」 ああ、そうなんですか。 確かにせいとかいちょーさまはかなりの美声だし美形だしスタイルもいいよね。 なんか、ちょっとだけおもしろくない。 前に、聞かれたことがある。 「シィァンは、誰かを好きにならないの?」 「ないよ。」 好きっていう気持ちが、俺にはよくわからない。 バイオリン? あれはもう、俺にとっては無くちゃ生きていけないものだから。 多分みんなにはわかってもらえないけれど。 そこに在ることが当たり前で、一緒にいることが当然すぎて… この気持ちは、好きとか嫌いとかじゃない。 だって多分好きか嫌いかって聞かれたら俺は答えられない。わからない。 ただ言えるのは、無くちゃ生きていけないんだ、ってこと。 [*前へ][次へ#] [戻る] |