Long Song
7
***
「よお。」
「……」
俺の家の扉に寄り掛かったまま片手をあげて微笑んでくる確か小暮とかいう警察の偉いやつ。
さすがに昨日会ったばかりの人だ。覚えては、いる。
つーか待てよ。
なんでお前がここにいるんだ。
しかも私服だし。いや、制服だったらなおさら嫌なんだけどさ。
言いたいことは沢山浮かぶ。でもそれを聞いたらだめな気がするから、何も言えない。
どうしよう。
思考だけがぐるぐると回っていて、しまいには「鍵。」と言われて鍵を差し出してしまった。あほだ、俺。
「どうぞ。」
鍵を開けてドアを開けた小暮さんが、俺に向かってなぜか「どうぞ。」
ここは俺の家なんですけどね。もうあえて言うまい。
「ありがとうございます。」
「お、敬語使えんじゃん。」
「失礼ですね。俺にだって敬語くらい使えますよ。使うに値しない人間ばかりだから使わないだけです。」
ひゅう、と小さく口笛を吹く音がして、カチャリ、と続いてドアが閉まる音。
「…お前、学生のくせに一人でこんな部屋使ってんの?」
「こんなの別に…普通ですよ。」
そこに座っててください、とソファを指で指して、リビングの向かい側にあるキッチンに入る。
来た理由は全然わからないが、一応客だ。
紅茶でも入れて…そうだ、こないだ作ったクッキーがあった気がする。
俺の住んでいるこの部屋は、4LDKのものだ。
階は15階中の13階。13が好きだから、ここにした。
ダイニングは正直全然使わないけれど、他の部屋は割りと使っている。
寝室と、仕事部屋と、半物置と、普段使う部屋。
本当は俺はここにいちゃいけないから。昼間は外に出れない。
いわばこの家は俺を閉じ込めるための箱ってわけだ。
まぁおかげで不自由はしてないし、昼に仕事して夜に出かければいいわけだから問題はない。
紅茶を淹れながら、ふと浮かんだ疑問を口にする。
「なんでドアの前まで来れたんですか。エントランスは?」
このマンションはセキュリティもきちんとしているはずだから、無断で入るなんて絶対にできないはずで。
「管理人さんに話ししたら通してくれた。」
あーこいつ顔いいからな。
管理人さんは40代(多分)のおばさんだから、きっと「きゃーあなたカッコいいわね!いいわよ全然!!」みたいなことを言って簡単にドアを開けたんだろう。
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