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Long Song
3

Jax。知らない人がいない、とは言わないけれど、10代20代で知らないやつらはいないに等しいだろう。
永久はそこの前ヴォーカリストだった。なぜかは誰も知らないけど、突然何の前触れもなく姿をくらましてしまったのだ。

昨日路地裏で見かけたときは、ただのそっくりさんかと思っただけだった。


永久の顔はすごく整っているとかいうわけじゃない。
でも一度見たら目を離せなくなるような、特に笑顔とかは本当にやばいくらい…なんていうか、いつのまにかみんな惹きこまれている。
声も同じ。どんな声かと聞かれてすぐに答えられる特徴とか、雰囲気があるのではないけど、どんな曲でも、聞けばすぐに永久の声はわかる。


要するに、どきどきするのだ。永久を見ていると。



とまぁ、永久の不思議な魅力についてはさておき。

だから初めは、ただのそっくりさんだと、本当にそう思っていたのだ。
永久やJaxのメンバー達は、ここの近くにある中野芸術学校の生徒だというのは有名な話だったから、なおさら永久はこんなところにいるはずがないと。
それに前は黒髪だったのが金髪になっていたし。
でも、情事中の声を聞いてわかった。
声変わりもしていたし、確信ではなかったけど。それでも多分絶対にそうだ、程度には。
俺も、Jaxのファンだったから。
一応名前を聞いたら本当に永久で(芸名はトワだったけど、永久でエイクとも読むからすぐわかった)。

性格はかなり、思っていたのとは違ったのだけど、でもだからといって落胆することはもちろんなかった。


そう、それでなんで永久が歌詞を書いているのかと思ったかというと、Jaxの曲の中で何曲か、永久が作詞とか作曲している曲があるからだ。
だいたい5曲に2曲くらい。

「今も作詞してんのは知らなかったけどな。」

「自分で作って一人で歌うだけですから。」

「へー…というか中野は辞めたのか?」

あそこは確か全寮制だった気がする。
仕事とかで出るなら別だが、普通平日は出て来れないだろう。

「えぇ、もうあそこにはいられなくて。」

「…そ、っか。」

Jaxを辞めたから?まあそれは当たり前か。
そもそも、なんであんな突然に辞めたのか。
10年来の天才ヴォーカリストとまで言われていたのに。
週刊誌で話題になるようなことも何もなかった。だからこそ、おかしい。

まぁ、誰も知らないようなことだ、言いたくないに決まってる。
無理して聞くことはないだろう。無遠慮な好奇心がどれだけ他人を傷つけるかは、俺もよくわかるから。






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あきゅろす。
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