Long Song
10
重いような、けれど気には留まらないような、不思議な沈黙。
互いが互いの世界に入りつつ、周りに気配をめぐらせて。
そして、均衡が、崩れる。
ガチャン!!!
永久が持っていたトレーが、その上に乗っていたものと共に、落ちる。
「ふざけんな!お前に何が…何がわかんだよ!!」
胸を渦巻くこの苦しみも、
声に出してしまいたいのに出してはいけない葛藤も、
逃げてしまいたいけど逃げられない過去も
だからこそ忘れようとしているというのに、それでも忘れられるわけが無いことなんて、俺が一番わかっているのに。
「お前が助けてくれんのか!?忘れさせてくれんのか!?」
そのために夜の街に行ったのに。
消すために、塗り重ねているのに。
繰り返すほどに、増す痛み。
それでも繰り返さないと生きていけない。
「逃げられないことぐらい俺が一番わかってんだよ!でも、じゃあどうすればいい!?」
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