短編小説
意外な事実
注意
・この話では月村忍・すずかは自分達の事=夜の一族をなのは達に告白しています
・ノエルとファリンは自動人形です
・この話は思い付きです。本編とは全く関係ありません。
とある休日、高町恭也とその恋人月村忍、そして仲良し5人組(なのは・はやて・フェイト・アリサ・すずか)+1(翔)が月村邸に揃っている。
「早速今日来てもらった本題に入るけど、実はノエルの中に何かの曲が入ってたんだけど、聞いたこと無い言葉で何て言ってるか分からないのよ」
「……もしかしなくても、今日の召集の目的は僕ですか?」
「そ。翔君、長生きらしいし、もしかしたら分かるんじゃないかと思って」
「この世界の古い言葉でしょうから自信はありませんけど、それでも良いなら聴くだけ聴いてみましょう」
翔が頷くと忍は礼をいい、彼等の囲むテーブルに手の平サイズの機械を置いた。
「一応、こっちに落としておいたの」
そういうと忍はボタンを押した。
弦楽器を弾いているような音が、所々不鮮明だが、確かに曲と思える旋律となって流れる。
「ぅゎ〜懐かしい…エドゥーエの求婚歌だ」
「翔君知ってるの!?」
数秒聴いただけでの翔の呟きに驚愕の声をあげる忍。と同じ思いの一同。
「エドゥーエっていう、とある世界のとある一族の歌ですよ。求婚はこの曲ですることが掟として決まってるんです」
「掟って…プロポーズの言葉が決まってるなんて、女としては面白くないわね」
「けど、どっちにも分かり易くて良いんじゃない?」
翔の言葉にボソッと思ったことを呟くアリサとそれに答えるすずか。
「いや、曲は決まってるんだけど詩は自分で作るんだよ。相手の容姿や性格、想いを言葉にして、ね。
だから箇条書きみたいなのから曲に合わせた歌詞になってるのから、人それぞれなんだよ。だから曲は同じでも詩が同じ事は無いよ」
そんな2人へ翔が説明を加える。
「う〜ん、その一族だったら、恭也がどんな詩をくれたか興味あるな」
「…勘弁してくれ。俺には無理だ。翔にでも代筆頼んでるよ」
「そうもいきませんよ。この歌の詩に関しては、嘘は一切許されませんから。“決して美しいとはいえない、むしろ醜いが”とか“君の容姿は並だ。その分性格は聖女のようかと言えばそうではなく、普通だ”ってのだってありましたよ?」
「………それって喧嘩売ってんの?」
「…えーと、プロポーズなんだよね?」
「そんなん、フラレルやろ」
続けられた翔の説明にしっかり呆れているアリサ・すずか・はやて。なのはとフェイトは驚きから目を見開いている。
ちなみに恭也は「それなら俺にも出来そうだが…それはいいのか?」と首を捻り、忍は(例として挙げられた一文を聞いてから)テーブルに突っ伏して笑っている。
「だから嘘は厳禁なんだよ。“君の為なら死ねる”とか言って、相手に“なら今すぐ死んで”って言われて躊躇したら“求婚歌で嘘ついた”って事で処刑だよ」
「はぁ!?」
「違反したら処刑なの?」
「そうだよ。エドゥーエ一族は繁殖力が弱かったのもあって、家族を増やす“結婚”に繋がる求婚は重要視されてたんだ。だから求婚歌で嘘ついたら処刑。
ま、自分の人となりを示すものでもある求婚歌で嘘つく様な奴は、生きてても誰も振り向いてくれなくなるしね」
“Af luzi que se aquce em luzen solaripf e charxemes 「ブッ!ゴッフゲホゴホッ」
だが、詩が紡がれると別の音と伸ばされた腕が(スイッチを切って)音を止めた。
「ゴホッ… なんでそれが…」
咳がおさまった翔は(咳き込んだせいで)目尻に滲んだ涙もそのままに呆然と呟いていた。
◇
「落ち着いた?」
「はい。取り乱してすみません」
紅茶をゆっくりと飲み干した翔は、忍の問いに軽く頭を下げた。その頬が僅かに赤いのは、盛大に取り乱したせいだろう。
「それで?翔君が慌てたって事は知ってる人のだったの?」
翔の説明と慌て方からの推測を忍は尋ね
「………僕です」
「「「「「「…………」」」」」」
意外過ぎる答えに呆気に取られた。一応言うなら呆然としたのは忍だけではなくその場の全員だ。さり気にノエルも目を見開いている。
「翔君って……翔君がプロポーズした時のって事で良いのかしら?」
「そうです」
最初に現実復帰した忍の問いに答える翔の顔が照れくさそうに見えるのは決して見間違いではないだろう。
というか、妻や恋人に贈った詩とかプロポーズの言葉なんて誰にとっても恥ずかしいだろう。
「なんでそれがノエルに入ってるの?」
「知りませんよ。っていうか、知ってたら流れる前に止めましたよ…」
肩を落としての翔の言葉に全員が頷いてしまったのはしょうがないだろう。
「ここにあるって事はこの世界だったんだ……」
そして翔はフッと視線を窓へ、その向こうの空へ移し、感慨深そうに呟いた。
「気づいてなかったのか?」
「今回生まれたのがこの世界に来た初めてだと思ってました」
ワザと呆れるように言った恭也の言葉に、クスリと笑った翔からは、遥かな年月を経た重みのようなものが感じられた。
「エドゥーエは人間じゃなく、敢えて言うなら亜人の一族。強靭な身体と異能、こちらで言う超能力を持ち平均寿命は800年。一族固有の能力としては他者の血液を取り込む事で己の能力をブーストしたり、相手の能力を多少の劣化はあれ手に入れること。
あの時は、400歳ぐらいで他世界へと旅に出て、200年位して彼女達に会いました。フラフラと色んな世界に行ってたから、この世界とは気づきませんでした。
まあ、言い訳をさせてもらうなら、あの時とは全てが様変わりしてますからね」
細めた目で窓の外を眺めながら、翔は言った。
「そう言えば、彼女達に会った世界、この世界ですが、エドゥーエには合わなくて、現地の生き物の血を摂取しなきゃ生きられませんでしたね」
「……それって吸血鬼じゃない」
「そうだね」
アリサの呟きを翔は肯定した。
「不吉と捨てられたアルビノの双子の姉妹を、血液採取の都合から育て、一緒に旅をした…
最低だって言ってくれていいよ。僕はこの世界を見てみたかったし、その間騒がれずに血を手に入れる為にあの子達を利用していたから」
「……けど、その子達があの歌を贈った相手なんじゃないの?」
「…ええ。
僕は自分の利己的な理由も隠さなかったけど、双子もアルビノも迫害の対象だったあの時、あの子達は僕にその心を寄せていた。利用する為とはいえ育ててもいたから僕にも多少の情はあって、「愛も心もいらない。子供だけでもください」そう言われて拒めなくて、妊娠を機に僕も腹を据え、歌を贈った」
「…それがあの歌?」
忍の確認のような問いに、翔は頷いた。
「その歌がわたしに入っていたという事は、翔様と何か関係があるのでしょうか」
「そういえば、血が必要になったとかって、ちょっと似てない?」
ノエルの溢した疑問にアリサがポツリと呟き、一同が「確かに」と頷いた。
と、
「まさか……………… 忍さん、すずかちゃんでも良いんで少しだけ血を下さい」
翔が申し出た。
何をする気か予想のついた忍の承諾のもと“家”から医療用自動機械が送られ、忍の血をシャーレに採ると戻って行った。
・
・
・
30分後
[エル、結果が出たわよ]
突如テーブルの上に画面が現れローズが言った。
全員が集中する中
[ほんの少しだけど遺伝子情報が残ってたわ。血の薄さ的に10代は軽く超えてるけど、確実にガイナツェ・エドゥーエの血族ね。おめでとう、エル。忍は貴方の子孫よ]
にっこりとした笑顔と共に、呆気無いほど簡単にそれは言われた。
「……やっぱり……」
「「あ、あはは…」」
予想していたとはいえ、翔はガックリと肩を落とし、忍とすずかは何かを誤魔化すように笑った。
[奥さん達は普通の人間だった事から考えても、忍達の特異体質はガイナツェ・エドゥーエからの遺伝ね]
「ってことは………
翔君がわたし達一族の始祖ーーー!!??」
忍の叫びが全てを表していた。
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