「!」
「いつのまに!?」
そんな2人の行く手を阻み、2人を囲み閉じ込めている透明な檻。
「人の愛し児達に、随分と好き勝手してくれたようだね?」
抱きしめたはやてを放さぬまま、ゆっくりと翔は透明な檻へ身体ごと向く。
「それにその姿。僕の愛し児達を貶してるの?
それとも、俺に殺されたいのか?」
背筋に寒気が走る、それでも笑みだったものが、最後の言葉と共に消え、髪が逆立つほどの殺気と魔力が翔から噴出す。
それでも、はやてに何の影響も無い辺りが翔らしいが。
「フンッ」
パリンッ
小さな気合と共に何かの割れる音が響き、捕らわれていた2人の姫が解放される。
「「おじいちゃん!」」
「無事で何よりじゃ」
開放された少女達の呼び声に、人民服を着た猿?は顔を綻ばせる。
「さ、己の行くべき場所へ行きなさい」
「おじいちゃんは?」
「フューグがあれほど怒っていては、わしの出番はないじゃろ。まあ、必要ならすぐに来るでの。2人は2人のやるべき事をしなさい」
「はい」
「ありがとうおじいちゃん」
礼を言い、2人の少女は大切ね家族の下へ飛び立つ。
「なのは、フェイト、無事で何より」
飛んで来たなのはとフェイトを、はやてと一緒にコートで包んで抱きしめる。
「さて、好い加減にその愛し児達を侮辱する下手な仮装を止めてもらえるかな?
そのままだと、苛立ちのままに“つい”挽肉にしてしまいそうだ」
腕の中の子供達に向けるのとは正反対の、冷たく鋭い眼差しが透明な檻に捕らわれたなのは?とフェイト?へ向けられる。
「「くっ」」
その言葉が偽りではない事を示すように、一回りほど小さくなった檻に、少女の姿が仮面をつけた青年の姿に変わる。
「ア、アンちゃん、ヴィータが、シグナム達が…」
「それが愛し児の望みなら叶えるよ」
青白い顔で涙を流すはやての頭を撫で、翔は言う。
「ローズ」
[アクセスするけど平気かしら?大丈夫なら、任せて頂戴]
「はやて、少し痛くて疲れるかもしれないけど、良いかな?」
「皆とまた会えるんなら、痛いんでも何でも我慢する。お願いや。アンちゃん、ローズ」
「なら、これに手を置いて。それとこれ」
「同調装置?」
「ローズもアクセスするからね」
良く分からないながらも、翔とローズを全面的に信じているはやては渡されたバイザータイプの同調装置をかける。
[見つけた。………守護騎士のプログラムと管制人格のプログラムのコピー完了。ついでに容姿の書き換えも終了。良いわよ、エル]
「リンカーコア摘出」
「うあっ」
「はやてちゃん!」
「はやて!」
なのはとフェイトが見守る中、はやての胸から光る球体──リンカーコア──が出てくるが、その光には黒い触手のようなものが幾本も絡みつき、中へ入ろうとしている。
「端末切断。保護」
が、その触手を切り離し、切られながらも絡み付いている触手ごとリンカーコアを翔は両手で包む。
「はやて、気絶して良いからね。なのは、フェイト、はやてを支えて」
「だ、い、じょうぶ、や」
「はい」
「うん」
3人の返事に、翔は笑顔を見せると一転真剣な顔になる。
「探査針投下 侵食端末破壊除去」「ぐぅ……ぁ、ぁぁああ……」
「はやてちゃん!」
「はやて!」
「だ、ぅぁ…い、じょ…ぅ、ぶ、や……ま、けへ、ん……ああ!!」
「終了」
翔が手を放すと、触手も侵食も何も無い、きれいなリンカーコアが現れ、はやての胸に戻っていく。
「さて、後は暴走を待つばかりの、この書が欲しいんだったね? あげるよ。愛し児達が世話になったお礼も兼ねて、ね」
闇の書を手に取った翔は仮面の青年に言う、その顔は惚れ惚れするような、なのに寒気しか催さない、笑顔。
「シセル・ラディア」
「「ここに」」
「これをアレラの飼い主、グレアムとかいったか、の元へ持って行き、結界を解いて囲え。暴走の核となる人間を欲しているコイツの事だ、奴等の飼い主しか居なければソイツを核とするだろう」
「「!?」」
檻の中で息を呑む気配がするが、それに構うものは居ない。
「核になったら囲った結界も解いておいで。入れ替わりに、アレラを送るから」
「「承知しました」」
頭を下げると同時に、シセルとラディアの姿が仮面をつけた青髪の青年の姿になる。
「聞いた通りだ。お前達は飼い主のところにきちんと戻してやる」
「「誰がお前なんかの思い通りに!」」
仮面の青年たちは檻を抜け・壊そうとするが一向に変わらない。
そして、
「さあ、飼い主の所へ戻るんだな」
檻ごと青年達の姿は消えた。
「アンちゃん。シグナムたち…」
「プログラムはローズがコピーした。今頃データを別のユニゾンデバイスに転写してるから、すぐに新たな、無害な書の守護騎士として会える」
「ホンマに?」
「ああ」
[ええ。本型のユニゾンデバイスは準備してあったから、後一時間程で転写も終わるわ。きちんと会わせて上げるから、私の腕を信じなさい]
「うん。ローズとアンちゃんなら安心や」
心配が無くなった安堵感と、性急な事態の変異に、緊張し興奮していた精神が落ち着き、はやては涙を流す。
「さ、ここは冷える。クリスマスの準備も終わってるし、帰ったらパーティーだよ。3人とも」
こうして守護者とその愛し児達は家へ帰り、楽しいクリスマスを過ごした。
一方
「あれはなんだ!」
「突然転移されてきました!」
「検索該当有り、!?ロストロギア、闇の書です!!」
どこかの次元では壊滅的な被害を受けていたようだが………………関係の無い話である。
備考
ギル・グレアム提督が闇の書を手に取り暴走させる場面と、その書を提督の元へ持ってきた2人の青年が提督の使い魔へ戻る場面が記録されていた。
また、闇の書を提督の元へ持って来た青年達は、守護騎士の捕獲を何度と無く妨害し、蒐集に協力していた事も明らかになった。
結果、ギル・グレアム提督は管理局の反抗と破壊をもくろんだ闇の書の主として記録される。
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