短編小説
再会 4
「何故最初からきちんと言わなかったんだい?」
大好きで、やっと会えた相手に重傷(下手すると即死)を負わせてしまう所だった3人が放つ自責の念を振り払うように、士郎が口を開いた。
「体が弱いので、取り敢ず「会いに行く」という約束だけでも済ませてしまおうと思いまして」
「君だと分からなければ約束を果たしとは言えないんじゃないか?」
士郎の言葉に、聞いていた一同は頷いて同意を示す。敢えて言うならその前の翔、いや、ラジェムの返答にキツイ視線も集まっていた。
「説明は後日改めて出来ますし、取り合えず「会いに行く」という約束だけは果たしておいた方が良いと思いまして」
が、そんな周囲の反応など気にもせずにラジェムは言ってのける。
「翔、じゃなかったわね。 えーと、「言いやすいのなら翔で良いですよ」なら、翔君。あれじゃあ、不審者としか思えないわよ?」
「すみません。動けるうちに約束した人達を回る事しか考えてなかったので。1人1人に説明しては時間が掛かり過ぎて、正直、身体がもたないので」
桃子の問いにラジェム(いや、もう翔でいいか)は深刻なはずの事をアッサリと話す。
「さっきから、話す度に魔法使ってるみたいだけど……」
そしておずおずとフェイトが口を開く。
「身体強化の魔法使わないと歩けないし、動いた後なら強化しないと話すのもキツイかな」
!?
翔の言葉に一同は息を呑み、
「体弱いなんてもんじゃないじゃない!!」
女性陣は声を上げた。
「そうですね。という訳で、僕は失礼します」
「どこに行くのかしら?」
桃子が心配そうに眉を寄せながら問い掛ける。(「えっ…」と声を上げていた娘達はスルーしていたが、触れてはいけない。だって桃子さんはサイキョウだ)
桃子の眉間に皺が寄っているのは、翔と出会った時の事を思い出し、同じ状態なら引き止めようと思っているのだ。
「“自宅”です」
そして、翔の返答に桃子(とついでに士郎。彼も桃子と同じ事を思い出していたから)はホッと息を吐いた。
翔が“自宅”と言うのは異世界に持っている、ローズの管理する“家”だと分かっているから。
「取り敢えず、このままでは何も出来ないので、こちらの時間で1年ほどポッドに入って身体を何とかします」
「それが済んだら、また来てくれるわよね?」
「それは………………………………………来させて頂きます」
桃子の言葉に、実は説明まで済ませて約束は完全に履行していた(=もう来る理由は無い)翔は少し悩み、じっと見詰める桃子(の笑顔なのに何とも言えない迫力)と期待と不安の篭った愛し児達の視線に、折れた。
「ああ、なのは・はやて・フェイト」
「「「はいっ!?」」」
翔の返事に安心していた3人は、突然呼ばれ背筋をピンっと伸ばしていた。驚いて。
「分かってると思うけど、僕の事管理局に洩らしたら「「「分かってるから絶対会いに来て!!」」」
翔の言葉を遮り叫んだ。必死に。(詰め寄ろうとして翔の使い魔達の牽制で止まったりなんて事は(彼女達の名誉の為にも)ない)
「分かった。
それでは、一年後に伺わせてもらいます」
安心したように笑うと、翔は(シセルに抱えられたまま)去って行った。
こうして、その日彼等の約束は守られた。
無限者が去った後も、彼の愛し児達の、いや、その場の全員の顔は笑顔であり、彼らの機嫌は良かった。
まあ、碌に話も出来ず触れることも出来なかったのは一部には不満だったが、帰ってくる(彼らの中では確定、押し切る来満々)のが時期含めて分かっているのでやっぱり喜んでいた。
まあ、とある少女達は即座に退職しようか悩んでいたが………(人手不足の某所では高ランクの人材を必死に引き止めたり、それならと一年後の(長期)休暇を申請したり色々あったようだが、割愛する)
[前へ][次へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!