三毛と契約 5 結局のところ。 ミケは未だに我が家にいる。 契約内容を「息子の恋人と一緒に仲良く幸せに暮らす」と書き換えた結果、母親の命を奪うと契約違反になるため、母親も未だ健在だ。 以前と変わったことと言えば。 値切って値切って値切りまくった結果、契約報酬は『女の命』である髪の毛を切るということで手を打った。 あんなに大切にしていた髪の毛を切るのだから、母親は嘆くかと思っていたが、「福ちゃんの幸せのためだから」と案外サバサバしていた。 髪を切った途端にパートの仕事も見つかったし、慢性の肩こりも良くなったようだし、むしろ良いことずくめだ。 ミケは毎日忙しそうに二十数匹のペットの面倒を見ている。 母親のパートがある日は、魔法だか何だかを駆使して家事もこなしている。飯はなかなか美味しくて、褒めてやると「エヘッ」と嬉しそうに笑った。 どういう魔法を使ったのかわからないが、ミケのおかげで俺はタダで高校にも通えることになった。 これは母親の願いであり、契約内容の「幸せに暮らす」の中に含まれているのだそうだ。 というわけで現在、俺はバイトをしながら勉学に励んでいる。 それから、もうひとつ。 「ようやく取れた契約ですから、精一杯頑張ります!」 そう言って、ミケはしょっちゅう俺のベッドに上がり込んでくる。 面倒だが、仕方なく俺も相手をしてやる。 あの凶悪なギザギザな歯も、見慣れてくると愛らしく感じてきた。 歯を立てないように、必死に奉仕する姿を見るとなおさらだ。 頭を撫でてやると、ミケは幸せそうに目を細めて、普段は服の中に隠しているしっぽを揺らす。 何だかんだで俺もペットは好きだからな。 〜おわり〜 [*prev][next#] [戻る] |