三毛と聖夜 3 ピンポーン。 さあ、乾杯だ、というところでまたチャイムが鳴った。 「メリークリスマース!!」 「……えっ! なんで?!」 出迎えたミケが目を丸くする。 「バカバカ、こっちに来てるなら連絡くらいよこせよ。僕、寂しかったんだから!」 飛び込んできたのは、スタッズのついた黒ずくめの服に、チェーンやらクロスやらジャラジャラと巻きつけたパンクルックの男。 服装とは裏腹に、愛くるしい顔立ち。金髪の巻き毛、そして青い目。外国人か? ――いや、ミケの知人だ。 「あっ、ダーリン。こいつは留学先で出来たお友達です」 「名前は適当に呼んでいいぞ! 許す!」 留学先? ――天界じゃねぇかよッ! クリスマスだというのに、天使がずいぶんとアレな格好しやがって。今時期は書き入れ時じゃないのか。いや、知らんけど。 「前に会ったの、いつだったかなぁ」 「日本で“翼の折れたエンジェル”が流行ってた頃だネ」 「そうだった、そうだった!」 天使と悪魔が笑い合っていた。 何それ、天魔界の鉄板ギャグ? 「では、改めまして――カンパーイ!」 予期せぬ客も現れたけれど、ようやくパーティーが始まった。 「悪魔がクリスマスパーティーとか、チョーウケル」 天使はフライドチキンを片手にケタケタ笑いながら、酒をガブ呑みしていた。 「暴飲暴食をする天使も相当だろ」 俺がそう言うと、天使はニヤリと笑った。 「イイネイイネ。物怖じしないネ」 「こんな悪魔がいるんだから、あんたみたいな天使がいても不思議じゃない」 と、三人の悪魔を見やる。 「日本は居心地いいよー。信者にこんな姿を見られたら、卒倒されちゃうからネ。これでも色々と気をつかってんのよ」 天使がムハーとため息をついた。既に酒臭い。 「聖書に書かれてることってどんだけ大昔か知ってる? 信心深いのは立派なんだけど、さすがにこっちの事情だって変わってくるんだよネ」 「そうみたいだな」 「致命的なくらい亀裂のあった天界と魔界だって和解したんだから、人間界もそろそろ落ち着けばいいのにネ」 ――ちょっといい話になった。 「おい、天使。何か余興をしろ」 チビオがおもむろにそんなことを言った。 「ぬはは、任せろい!」 天使はフラフラと立ち上がると、背中からバッサーと大きな翼を出した。 純白の羽がふわりと舞い、何やら後光も背負っている。いやはや、疑っていたわけではないけれど、本当に天使だ。美しい。 すぅ、と一呼吸して、天使は歌い出した。 もーろびとーこぞーりーてー、oh yeah ……賛美歌かよ! オーイェー、じゃねぇ。 「シューワッキーマッセーリー」 「シューワッキーマッセーリー」 「シューワーシュワーキマッセーリー」 「Oh yeah」 天使の指揮で、ノリのいい悪魔と人間が賛美歌を合唱した。 …………。 平和で何よりだな。 [*prev][next#] [戻る] |