三毛と聖夜 2
ピンポーン。
クリスマスイブ当日。我が家のチャイムが鳴った。
母親とミケ(男ver.)はパーティーの準備で手が放せなかったので、俺は料理を虎視眈々と狙う猫を抱えて玄関に出る。
やって来たのは髪の毛が左右で白黒に分かれてる大柄な男と、七三分けにしてスーツを着込んだ子供だった。
ミケのところの社長と、その秘書だ。
もちろんどちらも悪魔。
「ビチオも呼ばれてたのか」
「この度はご招待くださりありがとうございます。その下品な呼び名には遺憾の意を申し上げます。后候補のご子息でなければ串刺しにして差し上げるところです」
「わーったよ、チビオ」
「……誰のせいでこんな身体になったと」
「自業自得だろ」
この相変わらず慇懃無礼な七三男は、元々は大人サイズだった。
しかし、子供サイズにならざるを得なかった事件から半年以上経つのに、未だ子供サイズのまま。いや、ちょっとは大きくなったのか?
今の世の中は慢性の魔力不足だそうで、なかなか元通りにするのは大変なのだそうだ。
「や、やりすぎてゴメンナサイ」
いつの間にか玄関先に出迎えに来ていたミケが、冷や汗を垂らしながらペコペコ頭を下げていた。
お前が謝ることもないと思うけどな、俺は。
「ところで、社長さん……いつもよりちっちゃくないか?」
いつも魔法で家の中を相当拡張しなければ入れないというのに、今日はせいぜい2mくらいしかない。まぁ、ちっちゃいといっても充分でかいが。
「今日は144分の1スケールにしてもらいました」
チビオが言う。プラモデルかよ。
……つか、何。ほんとはどんだけデカイのサーたん。
「なぁ、ホントにおかしくないか? 彼女にちっちゃいとか言われたら、かなりヘコむんだが」
「いえいえ、人間の女性から見て充分魅力的なサイズだと思いますよ。むしろ、大きすぎたら入りません。指輪はちゃんと持ってきていらっしゃいますか?」
「もちろん」
真紅のバラの花束を手にし、緊張した面持ちの社長が懐をポンポンと叩いた。
「大丈夫です、社長。ホテルのスイートも事前予約してありますからね!」
……ちょっと。
悪魔がクリスマスに勝負かけないでくれない?
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