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三毛と聖夜 1
 もうすぐクリスマス。

 ミケはいつもの黒っぽいピンストライプスーツの上から、お気に入りのフリルのエプロンを身につけて、クリスマスツリーに飾りつけをしていた。

「悪魔がクリスマスを祝う準備なんていいのか?」

 俺が素朴な疑問をぶつけると、ミケは不思議そうに首を傾げた。

「日本のクリスマスなんて、欲望にまみれてるじゃないですか」

「……そうだな」

 少なくとも、俺の友達にクリスチャンはいない。

「それに、天界と魔界はずいぶん前に和平条約を結んだので、昔みたいにギスギスしてないんですよ。ミケ、天界に交換留学しましたし」

 ちょ、なんだそれ。

 ツッコミを入れようとしたところで、母親がパートから戻ってきた。

「ママさん、おかえりなさい」

「二人に宛てて、こんな投書が来てたわよ」

「……投書?」

 母親から手渡された紙にはこう書いてあった。


『ミケちゃんと息子さん、夜はどっちが奥さんですか』


 ……どこのご近所さんだ。そんな下世話なことが気になるのか。

 呆れる俺の横で、「奥さんだって」とミケが照れていた。基本的にはお前の気分次第だろう。

「二人のどちらか女の子だったら、孫の顔を見られたかもしれないのにね」

 そんなことを言って笑った母親に俺は言いたい。

 女の子うんぬんの前にコイツは悪魔だ!

「ママさんはお孫さんが欲しかったんですか?」

 ミケが驚いた表情を見せた。

「あらやだ、ごめんなさい。ミケちゃんには何にも不満ないのよ?」

 母さんは慌てて否定するが、神妙な顔をしてミケが立ち上がった。

「早く言ってくだされば良かったのに」

 そう呟いたミケから、ボフン、と煙が吹き出た次の瞬間……

 ミニスカートにフリルつきエプロンを身につけ、金髪にメッシュの入った美少女が、ミケのいたはずの場所に立っていた。

 ニコッと笑った口元からのぞく歯はギザギザだ。

「み……ミケ、か?」

「そうです。可愛いですか?」

 俺よりちょっと背の高い美少女は、エプロンの端をつまんでくるりと回った。


「お、ま、え、わぁぁぁぁ!!」


 それなら俺は男として大切なものを色々捨てなくても良かったんじゃないのか?!

 さすがに女の子に殴る蹴るの暴行を加えるのは気が咎めたので、ほっぺたを引き伸ばしてやった。

「いたっ、痛ひ。女体化を維持するのは、かなり魔力を消耗するんですよう」

「そうなのか?」

「油断すると、角とか出ちゃいます」

 鬼嫁か。

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