三毛と上司 6
俺たちが我が家に戻ると、家の外観は何事もなかったように元通りになっていた。
だが、中は新築のようにピカピカで、敷地面積から考えられないほど広くなっていた。
そして、見上げるほどに馬鹿でかいオッサン(ただし美形)が、牙を剥き出しにして豪快に笑いながら出迎えた。
「いやー、はっはっは。すまんかった、すまんかった! アイツも悪気はないんだがな」
「社長……い、家が……」
「はっはっは、ちっちゃいことは気にすんな。寛ぐにはちと窮屈だったからな。ついでだ、ついで」
家の外観は変わらないのに、巨大なオッサンが立っても余裕なくらい天井も高くなっている。どういう仕組みだ。
髪の色が真ん中から白黒にパッキリ分かれているこのオッサンは、ミケのところの社長、らしい。
悪魔的にどういう立ち位置のヤツなのか……あまり考えたくはない。
オッサンはティーカップを二本の指でつまみ、母親の淹れた紅茶を一口でチミッと飲み干した。
「いやぁ、奥さんの淹れてくださったお茶は美味しいですな! お人柄が味に出てるのですかな!」
「んもー、サーたんったらお世辞がお上手」
母親が満更でもなさそうに照れまくっていた。
サーたん、って。
サタンにかけてるのか? ツッコミ入れづれぇ。
頭を半分吹き飛ばされたミケを復活させたのは、このオッサンらしい。
俺たちが屋根からすっ飛んで行った後、母親は大慌てでオッサンに事情を話して来てもらったのだそうだ。
「どうやって……」
「サーたんとはマイミクなの。ねー」
「毎日コメントありがとう」
「サーたんの日記、いっつも面白いんだもん」
「ギザ嬉しす」
やだ、なにそれこわい。
サーたん曰く。
髪の毛には魔力が宿るため、魔法の媒体と使われているらしい。
そして、契約の報酬として支払われた母親の髪の毛は、最近では稀に見るほど素晴らしいもので、サーたんは直々にお礼に来たのだそうだ。
そこで何がどうなったのか知らないが、二人は意気投合してマイミクになり、俺のいない隙に一緒にスイーツを嗜む間柄だそうだ。
家族にしか懐いてないはずの猫がオッサンの足下で丸くなって、俺は軽く絶望した。
どんだけうちに通ってたんだよ。
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