透、真剣勝負! 9
俺の正直な気持ち。
「もし俺にあと30センチ……いや、贅沢は言わない。10センチでもいい。もうちょっとタッパがあって、逞しい筋肉があればって、何度夢見たかわからないよ」
ふぅ、とため息をついた。
「どんなに努力しても、負けちまったら『もしかして、アイツより1cmでも高ければ』って思っちゃうんだよ。虚しいだろ。アンタ、俺の欲しいものを全部持ってんだよ」
俺はちょっとふてくされながら、学ランを拾った。
左腕が動かないので肩の上から羽織り、隅に転がっている早川の元へと近寄る。
「おーい、早川。起きろ。大丈夫か?」
見えるところに怪我はないようだが、早川が目を覚ます気配はない。しゃがみ込んでロープを外そうとするが、何せ片手なのでうまくほどけない。
四苦八苦していると、ルネが俺の代わりにほどいてくれた。
「睡眠薬で寝てるだけだ」
「……あのなぁ。あんまり早川いじめんなよ。お前だってコイツ気に入ってるんだろ。お前のチームは、お前が気のおける人間しか入れないって聞いたぞ」
俺がそう言うと、ルネはフッと笑った。
「……それなら、お前も入るか?」
「はぁ?」
真横にいるルネを見ると、思ったよりもすぐ傍に顔があった。その青い瞳に呑み込まれそうになって、思わず後退りする。
「お前も俺のものになれ」
「……い、いやいやいや!」
「何でだよ。さっきは俺を散々褒め称えてたじゃねぇかよ」
嫌がる俺の表情を見ると、ルネは目を細めてさらに口元をゆるませた。
「それはそれ、これはこれっ! 俺、そういう活動には興味ないし。喧嘩も嫌いだから。つか、近いっつーの。離れろ」
「お前とはまだ一勝一敗だからな。ようやくドローだけど、チームに入れば今後はちょっかい出さないでおいてやる」
「うっわ、卑怯。でも、無理!」
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