透、風紀を守る! 6 教室に戻ると、さっそく井原がねぎらってくれた。 「お疲れ! どうだった、初仕事は?」 「俺の目の前で、校門破りをしようとした不届き者がいたよ」 「えっ、それで……どうなったの」 「ギッタギタのケチョンケチョンにのされてたよ」 横から沢木が口を挟んだ。 「そこまではやってない!」 俺が口をとがらせて抗議すると、「やることはやったんだね……」と井原は乾いた笑いを浮かべた。 「うちの風紀委員長って、ここじゃ珍しいタイプだよな。トールちゃんにチョイ似てる」 「俺はあんなに格好良くないし、真面目でもないよ」 「トールちゃんはカワイイ系だから」 「カワイイゆーな」 俺がふて腐れて膨らました頬に、沢木はプスッと指を刺してしぼませた。 「似てるのは雰囲気な。優等生タイプなのに、芯が強そうっつーか」 「へぇ、そうなんだ」 沢木の話を聞いて、井原が興味津々の表情になった。 井原もこの学校では少数派なので、親近感が沸いたのだろう。井原は不良を避けるべく毎朝早くに登校するので、風紀委員にはまだ会ったことがないようだ。 「アイツ、なんでハチコーに来たんだろうな。もっと上を狙えそうだけど。ああ見えて実は馬鹿なのか?」 沢木が首を捻る。 確かに、俺もそう思った。 「頭、良さそうなのにね。家庭の事情じゃないの」 「本命の受験日にインフルエンザとか」 「それはお前だろうが!」 井原の自虐ネタに、俺と沢木は声を揃えて突っ込んだ。 [*prev][next#] [戻る] |