透、キレる! 5
不良の一人が、沢木を踏みつぶそうと足を振り上げた。
俺は涙目の井原の横を走り抜け、沢木を再び蹴ろうとしている男に、
ドガッ!!
……跳び蹴りをかました。
片足立ちになっていたその男が、漫画みたいに吹っ飛ぶ。
着地すると、もう1人の足下に向かって振り向きざまに回し蹴り。
呆然としながら姿勢を崩したそいつに当て身を喰らわせた。
そこまでくると最後の一人が我に返ったらしく、怒りの表情で襲いかかってくる。
その袖を掴み、勢いをそのまま腰に乗せ、投げっぱなしの一本背負い。
男の身体は金網に激突して、「ガシャーン!」という乾いた音が響き渡った。
「…………」
……やっちまった。
金網に投げ捨てられた男の目はクルクル回っていた。
沢木も頭から血を流しながら、ポカーンとした目で俺を見ている。
井原に至っては、真っ白な灰のようになっていた。
キーンコーンカーンコーン
「あっ、授業授業っ!」
間の抜けたチャイムの音に、俺は作り笑いを顔に貼り付けて手をパチンと叩いた。
「そ、そうだな……」
俺は沢木に手を伸ばして立ち上がらせると、井原も連れて校舎裏を後にした。
「沢木、保健室行った方がいいんじゃない?」
「平気だろ、これくらい」
「井原は怪我ない? あ、口んとこ切れてるぞ」
「……やっ、でも沢木が助けてくれたから」
ようやく覚醒した井原がプルプルと首を振る。
「間に合わなくて悪かった」
「んなことない。ありがとな、沢木……」
井原の小さな声に、沢木は「昼飯のお礼」と笑った。
[*prev][next#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!