透、キレる! 17
「ところで透、大丈夫か?」
遠慮がちに木戸先生が問いかけてくる。
「……何が?」
「あの坊主にイタズラでもされたんじゃないかって。一応、介抱してきたけどよ。あれ、東南の早川だろ?」
木戸先生がそう言うと、江本さんがガタタッと音を立てて、椅子から落ちた。
「え、江本さん、大丈夫?」
江本さんがズッコケるとは……。顔色も悪い。
「わわわわ若、どどういうことですかっ?!」
「龍太、お、落ち着け」
「これが落ち着いてられるかッ! 若がどこぞの男の毒牙に」
「かかってねぇーッ!!」
結局、コトのあらましを洗いざらい喋る羽目になった俺。
「つまり、妹を守るために身代わりになったが、襲われかかったと……」
呆れたような木戸先生とは対照的に、江本さんは目を座らせて立ち上がった。すたすたと歩いて、壁にかかっていた日本刀に手を伸ばす。
「まっ、待て! な、何をする気だ、龍太!!」
「そいつ、万死に値する」
「ぶっそうなこと言うなッ?!」
江本さんの豹変ぶりに若干ひきつつ、、木戸先生が提案してきた。
「透、改めて早川に妹を紹介するって気はねぇのか? その、那由ちゃんとやらもアイツに悪い印象は持ってないんだろ?」
「いきなり襲いかかってくるような男だぞ。那由じゃ逃げられないだろ」
「……確かに否定はできねぇが……」
木戸先生は「若いってイイナー」と、遠い目をした。
「ま、でこチューで済んで良かったな。俺はまた、新たな世界が開けちゃったかと思って、マジで心配したぜ!」
俺が拳を握る前に、木戸先生は江本さんに殴られていた。
次章:透、遭遇する!
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