透、キレる! 11 副会長ご乱心事件(?)から数日。 あれから特に何をされるでも言われるでもなく、平穏に時は過ぎ、もうすぐ大型連休に突入する。 「あー、なんか嵐の前の静けさな気がして、心が安まらない……」 俺は机に突っ伏して呻いた。 「何にもないに越したことはないけどね」 井原の慰めに、俺は「まあね……」とうやむやに返す。 「元はといえばさ、不良に絡まれちゃった俺のせいだから、悪いと思ってる。ごめんな、足達……」 井原の言葉にハッとする。 最近、何だか元気ないなぁと思ったら、井原はそんなことを考えてたのか。 「馬鹿だな、そこは気にするとこじゃないって。だって、先生を呼ぶとか、お前を連れて逃げるとか、他にも方法はあったんだから。俺のこらえ性の問題」 そう言って、井原の鼻をピンとはじく。 「温厚なリアリストで通ってたんだけどなぁ。何だかんだで校風に染まっちゃってんのかなぁ、俺」 「リアリストってより、友達想いだよね。足達は」 井原が鼻をこすりながらそんなことを言う。 「そうか? 買いかぶるなよ」 俺はちょっと照れながら、帰り支度を始めた。 不意打ちだった。 井原と一緒に校門をくぐり抜けると、赤い髪の男が塀にもたれて立っていた。 「……ヨォ」 赤髪――早川は、俺の方を睨んでいた。 「ちょっとツラ貸せや」 そう言うと、早川は踵を返して歩き始める。どうするべきか躊躇していると、早川の怒声が飛んだ。 井原がびくついた顔で俺の顔を見る。 「井原は先に帰ってなよ」 そう言って、井原の肩をポンポンと叩いた。 [*prev][next#] [戻る] |