透、契約する! 12 中学時代に新聞配達をしていた俺は、その習慣から今も毎朝ジョギングをしている。 駅の近くの公園の中にある大きな池の周りの道を何周か走ると、池のほとりまで行ける石段を下りて深呼吸をした。 「お。やっぱトールだ」 不意に声をかけられて振り向くと、義家ルネが立っていた……。顔には絆創膏がいくつか貼られている。 「……まさか、こんな朝っぱらからルネに会うとは思わなかったな」 「俺的には、深夜だがな」 石段を下りて近づいてきたルネの息は、少し酒くさかった。朝帰りか、お前! 「そうだ。トールにコレやるわー」 ルネがポケットから取り出したのは、食い倒れ人形のキーホルダーだった。 「…………」 「修学旅行先で買った」 「……もしかして、俺に押しつけようとしてる?」 俺がそう言うとルネはニヤニヤ笑った。 図星だな、コイツ。さてはその場の勢いで買ったな。 「まぁ、面白いから貰っておく」 俺はそう言うと、その場で鍵を取り出してキーホルダーをつけた。 「……トール、いつもこの時間に一人で走ってるのか?」 「大体な」 そう答えると、ルネは「ふーん」と適当に返事を返した。興味がないなら聞くな。 「修学旅行は大阪……と京都?」 「京都と奈良。大阪は自由行動。ま、なかなか手応えあるヤツが多かったぜ?」 ルネはこともなげにそう言った。 ……お前、自由に行動しすぎだろうが。 「なーんか怪我してると思ったら。喧嘩でやられたのかよ」 「なわけねーだろ。全員ブッ倒した」 ……ま、そうだろうな。機嫌いいみたいだから。 俺より強い男が大阪でも負けナシだったのは、ちょっとだけ気分が良いけどさ。 「そろそろ行くわ。じゃあな。ルネ、お前もちゃんと学校行けよ?」 そう言って、石段をのぼりかけたところで、後ろから肩を叩かれた。 振り向くと、唇の端すれすれにキスをされた。 [*prev][next#] [戻る] |