透、契約する! 7 丈のタイプは、180cmもある自分より背が高くて、腕っぷしの強い男。 できれば2m近く。できればマッチョ。できれば五分刈り。 ぶっちゃければ、俺の親父。 女顔で150cmしかないような俺は、スペック的に非対応。 「というわけで、江本さん。俺、とりあえずは安全圏だから」 「なーに言ってんだ。十蔵さんの血が半分流れてるってだけで興奮する」 「え……。変態」 「透は特別にあと20cmで勘弁してやるから、さっさと背伸びろ」 「ボーダー下げんな。ヤメテ!」 あー、俺の体細胞ども。これから成長期が来ても、あんまりハッチャケすぎないように。 「俺は……俺は、認めませんよ、若」 丈から一定の距離を置きながら、江本さんが声を絞り出した。 「認められなくても俺はやる。もう決めたんだ。まずは母さんと那由の元に親父を送り出す。俺は、そこからじゃないと人生はじめられないんだ」 そうしないと、境遇にただ嘆いて、親父を恨み続ける子供のままだ。 「そんなの……若が犠牲になるようなもんじゃないですか」 「違うよ、江本さん。ムカついたからブッ潰す。俺が、そう決めたんだ」 「……潰す?」 「俺の親父が足洗うのを妨害しているヤツラ。片っ端から潰す」 そう言い放つと、丈が口笛を吹いた。 「イカスだろ。俺の嫁」 「勝手に若を嫁にするな! って……桜塚、それを知ってて若を?」 「十蔵さんから幸せを奪うような組織ならいらねぇ」 丈はニヤリと笑い、煙草を取り出して火をつけた。 「バレたらお前……ただじゃ済まねぇだろ……」 「だから、黙ってろ」 「…………」 江本さんが黙り込んだ。 [*prev][next#] [戻る] |