透、契約する! 6
「さぁくぅらぁづぅかぁぁぁああ……」
え、江本さん。顔がこえええ!
「何だ、透。江本にココ来るの話したのか?」
「言うわけないだろ」
「ちっ……。江本から十蔵さんに話が漏れるとヤベェな」
丈は面倒くさそうにサングラスを外しながら、車から降りた。
その丈に問答無用で殴りかかる江本さん。
「おおっ……っと。ちょっとは話聞こうぜ、江本」
「黙れ」
手首を掴まれた江本さんは、ギッと丈を睨みつけた。
その視線に丈がニヤリと口元を歪ませる。……あ。やばい。
咄嗟にスポーツバッグを江本さんと丈の横っ面めがけて投げ飛ばした。
丈が手を放して避けたために、江本さんだけバッグの餌食となった。
「な、何するんですか若……」
情けない顔をしてこちらに振り向く江本さん。ああ、良かった。若干怒りが霧散したようだ。
「助けてやったんだよ」
俺がそう言うと、丈が舌打ちした。
「江本。お前も透と一緒に俺ンとこ来いや」
怪訝そうな顔の江本さんに近づいて、その耳元で囁く丈。
「天国に連れてってやるぜ?」
「……未来の妻の前で浮気の算段か貴様ーッ!」
俺はスポーツバッグを拾うと、思いっきりブン回して丈の頭を殴った。
「は、ツマ? つま?」
呆然と立ちつくす江本さん。ですよねー。
「……丈は変態なので江本さんの方が危ないです」
「えっ、ど、どういう意味?」
「江本さん、ぎりぎりで丈のストライクゾーンかすめてるから。背丈的に」
江本さんはその言葉の意味を理解した途端、ぶわっと鳥肌を立てていた。
「透もさっさと50cmくらい伸びろよ」
「いや、50cmはどうだろう」
俺が2m? 想像できないな。
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