透、契約する! 2
あまり知られていないことだけれど、本当の話。
小学校の途中まで、静は普通に女の子だった。
中学入学前に病院で何やらの診断書をもらって、学ラン着用の許可を取ったらしい。戸籍は女の子のままみたいだけど。
というわけで、今ではすっかりラブラブカップルの彼らだけど、静は学ラン着用なので、端から見る限りは立派なホモップル。
「まぁ、井原は可愛いからなぁ」
と、周囲から生ぬるい目で見守られている。
「静さん、び、美人だよね?」
どうして誰も不思議に思わないんだろう、と井原が言った。まぁ、俺もそれはちょっと謎に思っている。
静の母親は、抗争の煽りで亡くなった。
「私、復讐のために生きているから」
以前、静はそう言っていた。
だけど、静の目に宿っていた暗い炎が、井原といる時には影を潜める。
両親とホクトと暮らした幸せな時間を思い出すと言っていた。
井原は確かに、周囲をホッとさせる不思議な力があるよな。
俺は、このまま井原が静の心の傷を癒してくれたらいいなぁと思っている。
静の父親も修羅の道を選んだけれど、俺の親父には足を洗うように勧めてきた。
同じように、大切なものを失うことはないと。
親父はそれを受けて、まずは妻子を自分の元から手放した。
裏稼業から完全に足を洗うまでは、会うことはないという決意を込めて。
俺の母親はただ静かに微笑んで、「お待ちしています」と答えた。
それから、数年が経ち。
「いつまで待たせるんじゃボケ!」
俺が親父に殴り込みをかけた。
色々と支援者も得て、俺が高校を卒業をすると同時に、親父の会社を譲り受ける算段になっている。
そうなりゃクソ親父はお払い箱なので、3年後には身体の弱い母親と温泉巡りでもしてイチャラブして来いと言ってある。
俺なりの親孝行のつもりだ。
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