透、風紀を守る! 14
その日は篠原先輩に色々と丁寧に教えてもらった。
まずは、座礼。そして、黙想。
準備運動を終えると、ひたすら素振り。
「何事もそうだと思うけれど、やっぱり基本が一番大切。センスも必要ではあるけれど、それを支える土台がないと伸びないと僕は思っています」
篠原先輩の言葉に、仲代先輩も頷いた。
それから、防具をつけて基礎の練習。
篠原先輩と仲代先輩が見本を見せた後、篠原先輩は俺、仲代先輩が井原の相手を務めて、親切にアドバイスをくれた。
そして、篠原先輩と仲代先輩が2人で掛稽古をはじめる。
掛稽古というのは元立ちが掛かり手に打ち込ませる練習法。太田先輩が20秒ごとに笛を吹き、攻守交代をしていた。
二人の気合いの声に、激しい打ち込みや踏み込みの音が響き、迫力があった。
「格好いいなぁー」
やはり井原も日本男児。憧れの目で二人の姿を追っていた。
タイプは違えど二人ともかなりのイケメンで、しかも大会での実績の持ち主。ここが普通の高校だったら、女子マネがわんさと押しかけるところだろうな。
そのうちに、剣道着姿の唐草先生が道場に現れた。先輩たちと共に、座礼で迎える。
唐草先生は俺の姿を認めると、ニヤリと笑った。
先輩たちに唐草先生は的確な助言をし、改めて稽古に励む二人を俺と井原の横から見守っていた。
俺は、前々から思っていた疑問を唐草先生にぶつけてみることにした。
「唐草先生は、どうして俺を風紀委員に推薦されたんですか?」
俺が武道オタクなのは、一部の人間しかしらないはず。
「……くくっ。お前、十蔵の息子だろう」
げ。
十蔵というのはクソ親父の名前だ。
「昔、俺の教え子の女生徒にちょっかいかけては騒動を巻き起こす他校のアホがいてな。その女生徒に瓜二つだからすぐにわかった。ご両親は元気か?」
「あー……ハイ。まぁ、そこそこ、ですかね」
俺が目をつけられたのは、あのクソ親父のせいってことか……。家に帰ったらシメる!
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