透、風紀を守る! 13
「大歓迎だよ、井原君。僕は篠原。こちらが仲代君」
「はじめまして、機械科2年、部長の仲代です」
二人は太田先輩から渡されたタオルで汗を拭い、スポーツドリンクを口にしながら破顔した。
「仲代君は去年、個人で大会3位に入賞したんだよ」
俺は目を輝かせた。
「あの、本当に俺、初心者なんですけど……」
オドオドする井原に対して、篠原先輩がにっこり笑う。
「もちろん歓迎だよ。昨日の自分を越える、が僕たちのモットーだからね」
その言葉に太田先輩も頷いた。
「確かに仲代君と篠原君の練習はハードだが、ちゃんと各自のレベルに合わせて教えて貰えるから安心してくれたまえ。俺も、この後から練習に参加するつもりだ」
「え、太田先輩はマネージャーじゃないんですか」
「ふはっ……まぁ、マネージャーみたいなものでもある。俺も完全に初心者だったからな。それに、この通りの貧弱だ。しかし、最近はようやく腕立て伏せもできるようになったのだぞ」
先輩……腕立て伏せ出来なかったのか……。自慢げな太田先輩がちょっと可愛い。
井原はゼロの状態から始めたという先輩の言葉にホッとしたようだった。
まぁ、体育の時間を見ていた限り、井原は腕立て伏せは出来るから、太田先輩よりは体力ありそうだ。
篠原先輩たちが着替えている間、俺は太田先輩に質問をぶつけた。
「たった3人で部として認められるんですか?」
「ああ。ハチコーの場合、実績のある生徒がいるなら部として認められる決まりになっている。仲代先輩が昨年の大会で個人3位、篠原先輩もそこそこの成績だったからな。それが認められて、今年は部に昇格した形だ」
「なるほど」
「本当は団体戦も出場させてあげたいのだが、いかんせん、俺の運動神経が壊滅的でな。せめてもう1人、強い人が入部してくれるといいのだが……」
太田先輩がそう言うと、井原が俺の顔を見た。
「……いや、俺だって全くの初心者だぞ」
そんな期待の目で見られても困るからな、井原?!
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