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透、風紀を守る! 12
 井原が目を輝かせる。

「剣道といえば、袴だろう。俺ので構わなければ着てみてはいかがだろうか。井原君は俺と同じくらいの背丈のようだからな。ああ、ちゃんと洗濯はしてある。足達君は自分のがあるのだろう?」

 太田先輩は、俺の持っていたスポーツバッグを指さした。

 少し袴がはみ出ていた。この人、結構目ざとい。

 太田先輩に連れられて、用具室で着替えることになった。

「匂いが独特なので、覚悟してくれたまえ」

 そう言って案内された小部屋は汗と埃の匂いが充満していて、井原は目を白黒させてむせた。

 井原は太田先輩に着付けてもらい、俺は一人でさっさと着替えを済ませる。そして、周囲に置いてある防具を見て回った。

 剣道の選択授業があると言っていたので、生徒に貸し出されるものだろう。

「よし、こんなものだろう。いかがかな、井原君」

「うおー、かっけー!」

 テンション上がりまくった井原が俺の元に寄ってきて、そこにあった籠手を手に取った。

「ぐはっ?! くさっ!!」

「長年染みこんだ匂いがな、玉にきずである」

 太田先輩はそう言ったが、井原は限界点を突破してしまったようで、「すげーすげー!」と楽しそうに匂いをかいでいた。

 無表情な太田先輩が、ふはっと笑った。ちょっと不思議な笑い方をする人だ。でも、何だかすごくいい人みたいだ。

 太田先輩もジャージに着替え、篠原先輩たちが来るまでの間に道場をモップがけしはじめたので、俺たちも手伝った。

 そのうち、ロードワークに出ていた二人が戻ってきた。

「あれ、足達君!」

 ジャージ姿の篠原先輩が嬉しそうな表情を向けてくれた。

 お言葉に甘えて見学に来た旨を伝え、井原を紹介した。

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