[携帯モード] [URL送信]
透、風紀を守る! 11
 じめじめと梅雨入りした頃、腕の怪我が完治した。

 俺はさっそく剣道部を見学することに決めた。井原を誘うと、篠原先輩と会ってみたかったらしく、ちょっと悩んだ末に同行することになった。

「俺、運動得意じゃないけど大丈夫かなぁ」

「平気だって」

 悩む井原の背を押しながら行ったものの、道場にはまだ誰もいなかった。

「早く来すぎたかな……」

 ふー、と息をついて井原の方を見ると、井原の横に黒縁眼鏡の男が立っていた。

「うわあ!」

 俺の声に驚いた井原も、横に突っ立ってる存在に気がついて悲鳴を上げた。

 眼鏡の男も俺たちの声に驚いたようで、三人で胸を押さえてゼーゼーと息をついた。

「け、見学の方だろうか」

 眼鏡の位置をくいっと直して取り繕ったその男が、口を開く。

 見た目も挙動も言葉遣いもどこかオタクっぽいその人は、背丈が井原と同じくらいで、だけど細身の井原よりもなお細い。

 吹けば簡単に飛んで行きそうな体格だけど、やはり剣道部員なのだろうか。まぁ、体格に関しては俺が言えたことじゃないけどな。

 校章を見ると、どうやら二年の先輩のようだ。

「あ、あの、篠原先輩にいつ来てもいいと言われていたんですが」

「なるほど。もしかして、新しく風紀委員に入った一年生というのはキミかね」

 眼鏡の先輩は無表情でウムウムと頷いた。

「そうです。風紀委員の足達です。今日は友達の井原も連れてきました。よろしくお願いします」

 俺が紹介すると、井原も慌てて頭を下げる。

「二年の太田だ。部長と篠原君は、現在ロードワークに出ている。戻るまでゆっくりしてくれたまえ」

 どうやらマネージャーを務めているらしい太田先輩は、肩から提げていたクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出して、俺たちに勧めてくれた。

 そして、少し考えて、

「胴着、着てみるかね?」

 と尋ねてきた。

[*prev][next#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!