透、入学する! 8
目が泳ぎ始めた上に、頬がほんのり紅く染まってゆく。……は?
急に木戸先生の、
『男ならより取り見取りなのになー』
という声が蘇る。
……ああ、そうですか。アナタ、そっちの人ですか。
ムカッとしつつもこれはチャンスと見て、とびっきりの笑顔を浮かべる。背景に薔薇を飛ばす勢いで。
たとえ不本意でも、俺は使えるものなら何でも使う派。
案の定、赤髪は耳まで赤くして目を逸らした。その瞬間、俺は井原の手を引いて走り出す。
「ほんっと、スミマセンでした〜!!」
という声を残して……。
いやはや物好きな男で良かった。二度と会いたくはないが。
「足達……スマナイ……」
「いいってことよ。友達だろ?」
「あっ、足達ィ〜」
感涙する井原を駅まで送る。「じゃあ、また明日」とお定まりの言葉で別れ、家に帰ろうとすると……。
やばい。
視界の隅を赤い髪の毛が横ぎった。
しかも目が合った。うわ、走ってくる、走ってくるよ!
俺は回れ右して逃走開始。新聞配達で培った脚力にはそこそこ自信がある。
「ちょ、待て。待っ!」
待てと言われて待つワケがない。
自宅までつけられると色々面倒なので、駅のそばにある公園の中を突っ切って撒くことにした。
しかし、敵もさるもの。つかず離れずでついてくる。
汗だくで息も絶えだえの赤髪にほんのちょっとだけ仏心が出て、話だけでも聞いてやるかと足を止めた。
……すぐ後悔することになるのだが。
追いついた赤髪は、しばらくハァハァ言っていたが、落ち着いてくると息をゴクリと飲み込み、こう言った。
「――キミ、女の子だよね?」
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