透、風紀を守る! 2
「風紀委員長の篠原蒼です」
放課後。木戸先生に引き合わされた先輩を見て驚いた。
この学校では珍しいタイプだ。
ちょっとクセのある黒髪を短く切りそろえ、生真面目そうな顔だち。
制服もきっちり詰め襟まで締めている。
小柄だけれど(いや、俺より断然高いが)、姿勢が良いのでスラリとして見える。何か武道をやっているのかもしれない。
「土木科1年の足達透です」
俺がペコリと頭を下げると、篠原先輩は少しはにかむように笑った。
「入学早々、唐草先生から推薦されるなんてすごいですね」
人の良さが滲み出ている笑顔だった。
「い、いえっ」
「大変な仕事を押しつけてしまってごめんなさい。どうしても人手が足りなくて……」
シュンとうなだれる篠原先輩。
「わっ、先輩のせいじゃないですから、気にしないでください」
「嫌がらせされたり、何か困ったことがあれば、僕か先生に言ってくださいね。すぐに何とかしますから」
真剣な顔で言う篠原先輩。
「……欠員が出たって、もしかして……」
俺がそう言うと、先輩は悲しそうにうつむいた。
「彼は真面目だったから。自分一人で全部抱え込もうとして……」
うわ、虐めか? 虐めなのか?!
つまり嫌がらせに耐えきれなくなったってこと?!
「だから、足達君は絶対に一人で我慢したりしないでくださいね。そうじゃないと、僕は何のための委員長なのかわかりませんから」
「は、はい……。でも、篠原先輩が大変じゃないですか」
俺が不安になると、横から木戸先生が口を出した。
「篠原はまだ2年なんだが、剣道部にも入ってて有段者なんだ。だから、うちの悪ガキどももそう簡単に手出しできねぇんだよ」
途端に俺の目が輝く。
色々な武道を囓ってきた俺だけれど、剣道は未体験だ。
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