透、真剣勝負! 12
「リョー、てめ……後で覚えとけよ」
「うっせぇ。その言葉まんま返すっつの。……つか、今何時だ? テメェ、一服盛りやがったな」
早川は額に青筋を立てて唸った。
「テメェがサッサとアイツ呼び出さねぇからだろうが」
「俺の携帯、勝手に使いやがったのか。……トール、ほんとに大丈夫か?」
早川は苛ついた表情を一変させ、俺の方に向き直って言った。
「大丈夫、ではないけど平気。真剣勝負は、まあまあ楽しかったよ」
心配そうな早川に笑顔を向けると、はぁ、と呆れたようなため息を返された。
「お前ら、沢木を離してやれ」
「……ゥス」
早川の言葉で、沢木を押さえつけていた男たちが離れる。
「ありがとう早川。またな。……行こう、沢木」
「お、おう……」
俺は、床に落ちた学ランとカバンを拾い、喫茶店を後にした。
「……トールちゃん、病院行くか?」
「んー、そうだなぁ。……金が足りないかも。沢木、いくらか貸してもらえる?」
「わかった。どこに行く? まずは産婦人科か?」
「殴るぞ」
沢木がフラフラの俺の代わりにカバンを持とうとしたが、
「……重っ?!」
と叫んだ。
「あー、今日は英和辞典と漢和辞典が入っているからな」
「バカ、そんなレベルじゃねぇだろ、これ」
「んー……あと、鉄板?」
「……意味わかんねぇ……」
唖然とする沢木。
「うちのクソ親父から中学の入学祝に貰った。いざとなれば武器にも防具にもなるらしい」
「お前の親父……ろくでもないな」
「まぁ、それは否定しない」
「これで義家ぶん殴ってやりゃ良かったのに」
「そりゃ反則だろ?」
義家ルネ。ムカツク野郎だけど、こんなチビの俺にも全力で向かってくれたのは、ちょっと嬉しかったんだ。
その後、俺は馨の祖父が開いている整骨院に駆け込み、散々馨からなじられた。
ズタボロの今日くらい、ちょっとは優しく接して欲しい。
次章:透、風紀を守る!
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