透、遭遇する! 13
――見事な晴天。
5月の大型連休の行楽日和、遊園地は大混雑していた。
その遊園地の入り口前。誰もが楽しそうな笑顔で通り過ぎてゆく横で、早川の表情は明らかに混乱していた。
「な……な……な?」
せわしなく、コッチ向いたりアッチ向いたり。
コッチには俺。
アッチには那由と馨。
……こういう事態になったのには理由がある。
早川が俺を庇って怪我した話を、幼なじみの馨が知ったのだ。
馨に詰め寄られると、俺はどうにも弱い。
さらに、早川に十分な礼を言えていないことを那由が気にしている事実までも馨が知り、その機会を作るよう俺に命令してきた。
何のためにこれまで黙ってきたのかと思ったけれど、反抗する気力もなく。
馨も同伴すること(もちろん、最初から本人はそのつもりだった)と、早川がマトモな格好をしていることを条件に、遊園地で会うことにしたのだった。
ちなみに、今日の早川は派手なTシャツの上から麻の白シャツを羽織り、下はインディゴのデニムという無難な格好だ。まあ、アクセサリーやらチェーンやらで多少ジャラついてはいるが。
顔にはルネにやられたアザがまだ残っていたけれど、この数日でかなり薄れたようで、精悍さを際立たせるアクセント程度となっている。
一番目立つウルフカットの赤い髪は、深くかぶったキャップのおかげであまり目立たない。
ヤンキー度が目減りしたコイツはかなりモテるらしい。待ち合わせをした駅前で、早川は女の子に囲まれて難儀していた。
よりにもよってコイツは「これからデートだから」と断ったものだから、正直、俺はそのままUターンして帰りたくなった。
それはさておき。
俺は、遊園地前で硬直している早川の手を引いて、那由と馨の元へと連れていった。
「ええと、こいつが早川。こっちは幼なじみの墨田馨」
まずは馨を紹介する。
今日の馨は、ボーダーシャツにフリルのミニスカート、黒い七分丈レギンスを履いている。ここしばらく袴姿しか見ていなかったので、普段着はちょっと新鮮だった。
馨が会釈するが、早川の目はどうも焦点が合っていない。
「……それから、俺の妹の那由」
「い、もう、と?」
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