透、遭遇する! 10 俺はちょっと返答に困った。 「……友達、ってことになるのかな」 「え、と、友達ッ?!」 沢木が慌てる。副会長は落ち着いているけれど、目の奥だけが笑っていない。 「ってことは、足達君は《シエル》の一員なのかい?」 「違います」 即答。 「俺はどこの一員でもないです。ぶっちゃけた話、早川と友達になったのは昨日からです。それまでは会いたくもなかったし」 沢木が混乱気味の顔で俺の方を見る。 「早川は俺をいざこざに巻き込まないように動いたせいで、チームの中で裏切り者扱いになっちゃって……」 「……誤解を解くため、早川と友達ってことにした?」 「そんな感じです」 俺がうなずくと、沢木は「早川は複雑だろうなぁ」と呟いた。 「どうして?」 副会長が沢木に尋ねる。 「早川がなりたいのは、トールちゃんの友達じゃなくて恋人、だもんな?」 「そういうこと言うなよ、沢木……」 俺が嫌がる顔を見せると、沢木はケラケラ笑った。 「え、早川ってソッチの気があったの?」 珍しく副会長がポカンとした表情になる。 「いや、それもまあ、不幸な誤解で……」 歯切れも悪く答えた。その件をわざと誤解させてるのは俺だからな……。 副会長は、ハァとひとつため息をついた。 「じゃ、義家ルネとは会ったこともない他人ってことだね?」 「……? 昨日会いましたけど」 「ハ?」 「だから早川がルネにボコられてて、その誤解を解くために……何、沢木?」 俺は、沢木が懸命に袖を引っ張るので振り向くと、沢木は「アチャー」と言いながら顔をもう片方の手で覆っていた。 [*prev][next#] [戻る] |