透、遭遇する! 6
「悪い。さっきまで用事があって携帯見てなかった。で、コイツ……誰なの?」
「義家ルネ。うちのチームの頭」
……ですよねー。何となく予想はしてた。
できることなら、一生邂逅したくない人物だったな。
「って、あれ? じゃあお前、もしかして俺を助けようとして、ボスから裏切り者扱いされたんじゃないの?」
俺がそう言うと早川はそっぽを向いた。
「……ははっ、お人好しだなぁ、お前」
思わず早川の頭を撫でながら笑いかけると、早川は顔を隠すようにうつむいた。
「まだ鼻血止まってないんだから、下向くのはやめとけ」
それでもうつむいたままの早川に、俺はククッと笑う。
「でも、ありがとな、早川」
「べ、別に……」
俺が勝手にしたことだし、意味なかったみたいだし……と、早川が小さく呟く声は聞こえたけれど、俺の中でコイツに対する嫌悪感は薄れて、何だか忠犬のように見えてきた。
俺の周りには最近、犬っぽいのが多い気がする。
とりあえず、呪いを解いてやってもいい気分にはなった。
「……さて、と。こっちも何とかしないとな」
俺は視線を背後に戻し、気を失ってるルネとやらを抱え起こす。
「トール、ど、どうすんの」
「ま、カツ入れて起こすよ」
「なっ! いい、俺が連れて帰るから……」
慌てる早川を軽く睨む。
「お前、誤解されたまんまだろ」
「でもお前、ルネが起きたらどうなるかわかんねえぞ?」
「その時はその時だ」
ルネに失禁の形跡がないのを確認してホッとする。さすがになー、こんなイケメンが失禁とか可哀想だからな。
俺が肩胛骨の間に膝を当てて力を入れると、ルネはうめき声をあげて目を覚ました。
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