透、入学する! 5
「よし、お前ら。ちょびっとだけ我慢して今日くらいは一列に並べ。ほらほら起立!」
木戸先生が大声を張り上げると、後ろにたむろってた不良どもがようやくノロノロと立ち上がって、後ろに並び始めた。
おお、ヤンキー先生はヤンキーの扱いが上手いのか?
とりあえず、列っぽいものが出来ると木戸先生は壁際の方へと引っ込み、じきに入学式が始まった。
校長先生もこれまた強そうな……なんてことはなく、背広を着こんだ普通のオッサンで少し安心した。退屈でお約束な話が終わると、にわかにざわめきが起こる。
『次は生徒会長からの挨拶です』
というアナウンスと共にステージに近づいたのは、しかめっ面でやたら長身の生徒だった。うちの親父くらいあるかもしれない。
壇上に上がったそいつを見て、俺は衝撃を受けた。
その男がいわゆる「長ラン」なるものを着ていたからだ。
は、初めて見た。
あんなの着てるのは昭和の不良か応援団、はたまた芸人のコントくらいだと思ってた!
しかし、どこからともなく歓声がわき起こる。
なに、ファンがいるってこと?
確かに高校生とは思えない渋さだし、あの身長も羨ましいけれどさ。うはは、意味わからん。
生徒会長が声をあげた生徒たちをひと睨みすると、騒ぎはすぐに収まった。
「なんだなんだ?」
後ろで井原も疑問の声をあげる。俺も不思議ではあるが、あまり深く詮索したくない世界だ。
生徒会長は眉間にしわを寄せて、髪の毛をかき上げると、イライラしたように低くよく通る声で言った。
『須藤彰彦だ。入学したからには卒業しろ。以上』
みじかっ!!
そして、また野郎ども(主にヤンキー)の歓声が響き渡る。歓声に混じって、舌打ちも聞こえる。壁際の先生達も苦笑いしていた。
ちょっとめんどくさい学校だなぁ……。
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