透、遭遇する! 4
「……もうちょっと楽しませてくれよ、リョー」
笑いながら早川に近づく金髪男。
気がつけば俺は、その行く手を遮っていた。
金髪男の顔からスッと笑みが消え、目を細める。
「ボクちゃん? 冗談なら笑えないヨ?」
「全くだな、笑えないね」
俺は手にしていた携帯を学生鞄に突っ込み、胴着の入ったスポーツバッグと共に地面へ置いた。
「コイツ助けるなら警察に電話すりゃいいのに、バカだねー」
そいつは、俺を見ながらククッと笑った。
「……それだと早川もしょっぴかれちゃうからな」
「ぁあ?」
「そいつには借りがあるんでね。今、ここで返させてもらう」
「……ふーん?」
その言葉に動きを止めた金髪男は、自分の顎に手を当てながら俺の姿を改めてマジマジと見た。
「中坊かと思ったら、その制服……ハチコーか」
「…………」
「お前、もしかして……何とかトール?」
こいつ。何で俺の名前を知ってるんだ?
そう思ったけれど、面倒なことになるのが嫌だったから、何も答えなかった。
「沈黙は肯定とみなす」
……来る!
俺は咄嗟に後ろに跳び退り、強烈な蹴りをかわした。
早川への蹴りを見ていたから予測はしていたけれど、想像以上に手元で伸びてきた。
コイツの蹴りは空手とは違い、身体をしならせ、体重を預けるようにして打ってくる。もしかしたらこいつ、キックボクシングでもやってるかもしれない。
これ以上下がると、この狭い路地に倒れている早川を踏みそうだ。
俺は、次の攻撃に神経をとがらせた。
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