透、遭遇する! 3
「ぐっ……ごはっ!」
「この程度で寝てんじゃねーヨ?」
……鈍い音と共に、赤い髪が建物と建物の隙間をよぎる。
え、今の……。
早川、か?
ほとんど無意識に俺はその隙間に駆けつける。
そこに転がっていたのはやはり早川で。しかし、顔面の半分は鼻血に濡れ、まぶたも腫れていた……。
「お、おい、大丈夫か?」
俺の声に気が付いた早川は、ハッと息を呑む。
「う、っせぇ、どこの誰か知らねぇけど、気安く触んじゃねぇ……よ」
「…………」
ま、まさか、き、記憶障害がっ?!
いや、俺に惚れたのは気の迷いにしたいってとこか。そ、そうだよな、それならいいんだが。俺の呪いのせいだったらどうしよう?!
軽くパニくった俺は、早川をぶっ飛ばした人間の存在を失念していた。
「……おい、チビ。どいてろ」
背後からの声に驚いて振り向くと、早川と同じ制服を着て、プラチナブロンドをソフトモヒカンにした男が突っ立っていた。耳にはピアスがズラリと並んでいる。
よく見ると青い目で日本人離れした顔立ち。ハーフだろうか。
綺麗な顔してるけど、早川をこんな血塗れ状態にしたのは……もしかしなくてもコイツ?
「……これは……やりすぎじゃない?」
俺がそう言うと、金髪男は片眉を上げて口元をゆがませた。
「裏切り者は死ぬほど後悔させてやる。それが掟だ。今なら見逃してやるからさっさと消えな、ボクちゃん」
そう言いながら、そいつは近づいてくる。
……笑ってるのか、コイツ。俺は寒気がした。
「どけ……」
背後に気配を感じて振り向くと、息の荒い早川が俺の肩をつかんで押しのけた。
次の瞬間、俺の目の前を風が通りすぎ、早川の顔面に金髪男のハイキックがめり込んだ。回転しながら吹き飛んだ早川は、アスファルトの上でバウンドした。
[*prev][next#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!