透、キレる! 16
「風呂から上がったら着替えが用意されてて、さっきの小学生が頭をぺこんと下げんのさ。『ゴメンナサイ』って。でもよ、俺らもそこのヤツらに迷惑かけたのは事実だったからさ。その時ようやく、素直に頭下げる気持ちになれたんだ」
「お詫びのために、しばらくそこの仕事を手伝うことになって……」
「それがキッカケで、俺は教師を目指すことにしたんだ」
木戸先生は照れながら、頬をカリカリとかいた。
「俺は、まあ……結局そのまま居座ってます」
江本さんも、恥ずかしそうに笑った。
お、俺んちの話かーっ!!
道理で覚えのある話だと思った……。
あの物置の中に江本さんと一緒に入ってたのが、木戸先生だったのか……。
そう。
うちは土木建築業を営む、『元ヤクザ』……なのである。
つい最近までは、『元』がつかなかった。
俺が親父のことを嫌いな由縁である。
「透があの時のチビだとはなぁ。いや。今でもちっちゃいけどな」
「うっさい!」
「でも、あの後、お前いなくなっただろ。俺、幻覚か座敷童かと思ったぞ」
「あの頃はこっちに住んでなかったんで。ほんっとにあの日はたまたま親父に会いに来てて、俺がこっちで暮らし始めたのは、去年からだから……」
「マジか。……今ちょっと背筋凍ったぞ。よくぞ来てくれた、あの日の透!」
「話を聞いてるうちに、こっちは色々と不安になりましたけど……」
親父……こっそり誰か殺してたりしねぇだろうな?!
「俺がお世話になってからは少なくとも誰も死んでませんよ、若!」
「龍太、そりゃフォローとしては微妙なところだな……」
木戸先生の言葉と一緒に、俺はため息をついた。
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