透、キレる! 15 「さ、最凶の……龍虎?」 二人を順番に指さす。 龍太と、寅ノ介。まさか。 「……なんだ、知ってたのか。その通り名、久しぶりに呼ばれたな」 やっぱりかーッ! 「若、誰から聞いたんですか。俺、そんなこと教えてませんよね?」 江本さんに、鋭い目で睨まれた。 「クラスメイトからだよ。木戸先生に憧れてるんだってさ……。確かに、一人で《龍虎》って呼び名はおかしいと思ったんだよな……」 俺がブツブツ言うと、木戸先生が失笑し、江本さんは困った顔をした。 「あの頃、寅と二人なら誰にも負けないし、本気で最強だって思ってたけれど、今思えば青かったですね。誰かれ構わず喧嘩売って」 優男にしか見えない江本さんの口から語られる物騒な話に、俺は目が点になる。そんな俺を見て、江本さんは少し表情を和らげた。 少し過去を懐かしそうに目を細めた木戸先生だったけれど、クッと笑って言った。 「……で、結果的にはヤのつく人たちに目をつけられて、俺らはシメられたワケ」 「もうちょっとオブラートに包もうよ、寅」 「十分包んでらぁ」 木戸先生はハァとため息をついた。 「もう、ボッコボコ。周りは取り囲まれて逃げられねェし。かといって、こっちから頭を下げるっつー考えもまるで浮かばなくてヨ」 「ま、死ぬかと思ったよね」 ……想像以上に死線くぐってんな、お二人さん。 「で、ロープでぐるぐる巻きにされて、物置に放置されてさ。もうダメだと思った頃、小学生くらいの子供が物置に入ってきてさ。カッコ悪ィけれど、助けて、って言おうかどうか葛藤したさ、俺も」 ……ん? 「でも、すぐにまた扉を閉められて。あー、もうダメかーと思ったらヤクザが来て、俺らを風呂場に放り込んでさ」 「正直、溺死か釜ゆでの刑を覚悟したけどね、俺は」 ……んんん? [*prev][next#] [戻る] |