透、キレる! 14
家まで逃げるようにして帰り、出迎えてくれた江本さんを蹴り飛ばして自室に飛び込んだ。制服のままベッドに突っ伏す。
自他共に認める美少年の俺だけど、中学までは同じ顔の妹がいたから男から言いよられることはほとんどなく、那由に近づく男どもは幼なじみにシャットアウトされていたので、案外平和だった。
あー、めんどい。
もう何も考えたくなかったのに、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
「……?」
画面を開くと、木戸先生からの電話だった。
「……もしもし」
『お、おう、俺だ。あのヨ……お前んチってマジで……?』
「はい?」
『足達って……その足達か?』
どうも木戸先生はテンパっているようで、話がよく見えない。
『ま、まあいい』
――ピンポーン。
「えっ」
『開けてくれ』
「ええっ?」
俺は慌てて部屋を飛び出す。
我が家はいわゆる「純和風邸宅」だ。俺が玄関までたどり着く前に、江本さんがガラガラと引き戸を開けた。
「……うあっ? 龍太?!」
「お、おう。久しぶり、寅」
……お知り合いデスカ……?
木戸先生は、俺の様子がおかしいのを気にして家庭訪問してくれたらしい。
「なんで言ってくれなかったんだよ、龍太」
「無意識にうちの若を特別扱いしちゃうかもしれないだろ。他の生徒に目をつけられたら困るだろうが」
「……う、む。まあ、そうかもしんねぇけどよ」
木戸先生は簡単に江本さんに丸め込まれていた。
一体、江本さんは木戸先生とどういう関係なんだ。この強面で伝説の元ヤンを「寅」と一字で呼び捨てとは。
……その時、俺の脳内に沢木の言葉が蘇った。
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