透、キレる! 13
……も、もしかして俺……早川君の新たな性癖を開拓しちゃったんデスカ?
あの時のアッパーか、それともその後のチョップか。
脳内の危険なスイッチでも押しちゃったのか?
早川君のお父さんお母さん、こんな息子さんにしてゴメンナサイ。
俺は思わず目をそらした。
……自然界において、視線を外した方が弱者だという。
目をそらすとほぼ同時に、早川は俺に襲いかかってきた。
これ以上症状が悪化しないかとか、うっかり殴られても喜ばれるんじゃないかとか、余計なことを考えたせいで反応が遅れた。
次の瞬間、俺はギューッと抱きしめられていた……。
「トール……」
「ちょっ、よせ。ぎゃー!!」
早川は俺の頭にほおずりをする。
「髪の毛、ふわふわ……」
ちゅうっ。
早川が俺のおでこに吸い付いた。
プチーン!
「足達ー、……足達ッ?!」
井原の声が近づいてきて、ようやく俺は覚醒した。
その後ろには木戸先生もいた。おそらく井原が呼んだのだろう。
俺の側の植え込みの中から足がニョキッと生えているのを見て、木戸先生は絶句した。
「と、透、お前……」
「呪われてしまえッ!」
そう一言叫んで、俺はその場から走り去った。
ああ、誰か。
俺の頭をぶん殴って、記憶を奪ってくれ!!
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