透、キレる! 8
それから数日。
沢木を介してクラスの他の不良たちともそこそこ言葉を交わすようになり、俺は不本意ながら女の子扱いでチヤホヤされるし、井原も「子犬みてぇ」と可愛がられていた。からかわれていた、というのが正確かもしれないけれど……。
まあ、そこそこ平穏な日々だった。
ところが、週明けの月曜日。沢木が昼休みになっても俺と目を合わせようとしない。
俺、金曜日に何かやらかしたかなぁ、などと考えていると……
「足達って子はいる?」
扉のところから声がかけられた。
声の主は肩くらいまで伸びた茶色い髪を後ろでくくり、笑顔を顔に張り付けたような男だった。校章の色からすると3年の先輩のようだ。
……校章以外にも、役員章が付いている。
ってことは、生徒会役員か?
「足達は俺ですけど」
扉のすぐそばの席に座っているのが俺だとは思わなかったらしく、先輩は驚いて目を丸くしたがすぐ笑顔に戻り、俺に向かって手招きをした。
ふと教室の方に目をやると、沢木がハラハラした目で俺を見ていた。
――嫌な予感しかしない。
先輩に連れられて来たのは、先日の乱闘の舞台となった校舎裏。
「改めまして。僕、副会長の渡辺雅です」
「ワタナベ、マサ先輩。副会長サンでしたか。初めまして、足達透です」
俺は頭をペコリと下げる。
「……で、何でしょうか、用件って」
「んー。沢木君がお世話になったって聞いてね」
「はい?」
「アイツがボコられた時、キミが助けたんでしょ?」
……沢木ーッ!
何を言いふらしてんだーッ!
「あ、勘違いしないでね。沢木君は最後まで言いたがらなかったんだけど。僕が興味があったから無理に聞き出したんだ。怒らないであげてね」
俺の心を読んだように弁解してくる。
なんか、アンタの笑顔が怖いわ!
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