透、キレる! 3
「トールちゃんちの親は弁当作ってくんねぇの?」
「うーん。うちの親、離婚してんだ」
「あ、悪ィ……」
沢木はバツが悪そうに呟く。
「気にしてないよ。沢木は?」
「ウチは共稼ぎ。滅多に顔も見ねぇ」
「そっか。お互い大変だろうけど頑張ろうな」
沢木が優しく笑うから、井原もちょっとうち解けてきたらしい。
「俺のも何か食う? コンビニ弁当だけどさ」
なんて言って、弁当を差し出していた。
「ちなみに焼きそばパンは、駅前のコンビニで買った方が美味しいよ?」
「焼きそばパンの味比べはしたことねぇなぁ」
沢木は井原からハンバーグやら何やら色々と貰いながら、笑った。
午後の授業は測量。
例のツナギに着替えなくちゃいけない。
「井原、先行ってて。俺、ちょっとトイレ寄っていくわ」
ツナギ着ると、用を足すのが面倒だからな!
「ラジャー」
井原は空気が読める男だから、用もないのに付いて来たりはしない。
とっとと用を済ませて移動教室に入ると……井原がいない。
「あれ? なあ、井原見なかった?」
クラスメイトに声をかけると、まだ来てないと答えられた。廊下に出て、左右を見ても井原の姿はない。おかしい。
……その時。
どこか遠くの方で井原の声が聞こえた、気がした。
慌てて廊下の窓に駆け寄って外を見ると、不良3人に首根っこ捕まえられた井原が校舎裏に引きずられていくのが見えた。
い、井原……。
お前、どんだけ不幸体質なんだよっ?!
不良を選んでぶち当たるシステムでも搭載しているのか?
俺はダッシュで井原の元へと向かった。
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