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透、入学する! 3
 俺は襟をビシッと正し、中学時代から愛用している学生鞄を手に校門をくぐった。

 入学式には親父や江本さんがついて来ようとしたけれど、丁重にお断りした。

 周囲を見回すと、やはり親子連れの姿はどこにもない。ほっ、世話焼きの江本さんがついて来てたら、うっかり恥をかくところだった。

 入学式というのにピカピカの1年生などどこにもおらず、目につく生徒たちの制服は着崩され、派手な裏地やらTシャツやらが見え隠れしている。

 初々しさなどカケラもなく、ガンの飛ばし合いがいたるところで勃発。

 さすがヤンコー。ここは戦場だ。

 一般市民を自負する俺は、流れ弾に当たらぬうちに、さっさと教室へと逃げ込むことにした。



 土木科の教室は3階の一番奥にあった。生徒はまばらだ。

 俺の席は出席番号順で廊下側の一番前。席につくとすぐに、教室の隅に立っていた一人が近づいてくる。

「……おはよ! 俺、後ろの席の井原北斗!」

 にっこり話しかけてきたそいつは小柄で(といっても、俺よりは大きいが)ドングリ眼が愛くるしい、どこか柴犬を思い起こす男だった。

「足達透です。よろしく」

「よろしくなー! お前みたいな普通のヤツがいてホッとしたよ。なんか怖そうなのばっかなんだもん。俺、門の前でくじけかかってたよ!」

「だよね……。井原はどうしてハチコーに来たの」

「本命の受験日にインフルエンザ」

「あらら、ご愁傷様」

 それは不幸だ。

「ま、土木にもちょっと興味あったからいいんだけどさ!」

 そう言って井原は笑った。土木に興味があるとは珍しい。

「足達はなんでハチコー?」

「親父が土建屋なんだ」

「おー、跡継ぎか!」

 俺たちは数少ない真面目生徒として、共に平和な学生生活を送ろうと誓った。

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