透、キレる! 2
午前中の授業が終わると、椅子を90度回して壁を背にし、井原と弁当タイムに突入する。
「昨日も思ったけどさ、足達んちの弁当って美味しそうだな」
コンビニ弁当を手にした井原は、羨ましそうに俺の弁当を覗き込んだ。
井原の母親は家事がド下手で、夕飯時の食卓にもコンビニ弁当やホカ弁が並ぶらしく、「ハンバーグ弁当はココのが一番ウマイ」とやたら詳しいが、やはり手作り弁当には憧れがあるようだ。
「どれか食べてみる?」
俺は弁当を井原に差し出す。井原は、ひじきの煮物の入った卵焼きをつまんだ。
「わ、美味しい。足達のお母さんって料理上手だね」
「いや、作ったのは江本さん」
「……え、誰? 江本さん?」
「あー、うちの住み込みの家政夫? いや、秘書かな?」
井原が驚きの声を上げると、焼きそばパンをかじってる沢木が近づいてきた。
「どったの?」
「足達んちに、ご飯作ってくれる秘書さんがいるんだって!」
いつも沢木にビビってるくせに、今の井原はそれどころじゃないようだった。
「トールちゃん、エロいなその設定……。その秘書、美人?」
「ぶは。男だ、男!」
思わず吹き出すと、沢木は「なーんだ」とつまらなそうにした。
「俺にも何か1つちょうだい?」
「いいよ。その代わり、その焼きそばパンひと囓りさせろ」
沢木は「食いかけだぞ?」と言いながらパンを差し出す。
「何。まさか変な病気持ち?」
「持ってねぇ!」
「ほら、箸」
焼きそばパンと交換で箸を渡すと、沢木は唐揚げをつまんだ。
俺が焼きそばパンをほおばってもぐもぐしていると、沢木がブフッと吹いた。
「うまそうに食うなぁ……」
結構好きなんだよ、焼きそばパン。
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