透、入学する! 18 「ふー。なーんかさ……トールちゃんって自然だよなぁ」 沢木がぽつりと言った。 「……何が?」 「俺さ、《カブキ》ってチームの一員なのヨ」 「あまり知りたくない情報だな」 「わははっ! それそれ。何でタメ口なのさ、信じられない」 笑ってるような、困ってるような表情で沢木が言った。 「……それは、沢木が俺に普通に接してくれてるからだろ?」 そう答えると、にやりと沢木が笑った。 「バーカ。俺らが普通にしてても、一般人は避けて通るんだっつの」 「ま、ハチコーに入学したら、多少のことじゃ驚かなくなったのかもな」 「アハハ、入学式は壮観だったもんなぁ」 沢木が目を細めて笑う。 「……沢木」 「ん?」 「お前、カワイーなー」 俺の言葉に、沢木が思いっきり咳き込んで赤面した。 「は? 何が、カワ……ッ?!」 「いつもお前にからかわれる俺の気持ちがちょっとはわかった?」 俺はニヤリと笑うと、立ち上がって制服のシワをパンパンと伸ばした。 「トールちゃんってば……小悪魔系」 「まだ言うか。陽も暮れてきたし、俺、そろそろ帰るわ」 「……そか」 「沢木さぁ。俺はほんとに、お前イイヤツだと思うよ? 不良とか何だとか関係なくさ。ノートでも何でも見せてやるから、ちゃんと3年で卒業しろよ。少なくとも校門で喧嘩とかやめろよ。見ててこっちがハラハラする」 「……んー。ま、そだな。トールちゃんがそう言うなら、もうちょい気をつけっか」 沢木がククッと笑った。 「そうしろよ。じゃな、また明日」 「おう」 ベンチを離れるとすぐに後ろからライターの音がしたけれど、俺は聞こえなかったことにした。 次章:透、キレる! [*prev] [戻る] |